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論文データベース(最新論文順)

ガザ地区封鎖の解除を
―― 第3次インティファーダを回避するには

2014年9月号

カレド・エルギンディ ブルッキングス研究所フェロー

第2次インティファーダを「われわれが犯した最大の間違いの一つ」とみなすパレスチナ自治政府のアッバス議長は、インティファーダ(暴力的抵抗路線)を復活させれば、前回同様にイスラエルの激しい対応を招き入れ、アメリカとの関係も悪化することを理解している。一方、ハマスも抵抗路線を西岸へと広げるよりも、イスラエルとの紛争が終わった後は傷を癒やして、ガザにおける立場の再建に専念したいと考えている。だが近いうちに、二つのグループはイスラエルに対する全面的な抵抗路線をとることへのためらいを払拭するかもしれない。別の言い方をすれば、現在進行しているガザでの戦争を前に、ハマスとファタハは異なるアジェンダをそれぞれが追い求めることの不毛を理解するようになるかもしれない。イスラエルもエジプトも、ハマスを信頼していない以上、第3次インティファーダを回避するには、ガザ地区の封鎖を解除し、その境界線をパレスチナ自治政府に監視させるしか手はないだろう。

エボラ・アウトブレイク
――感染の封じ込めを阻むアフリカの政治と文化

2014年9月号

ジョン・キャンベル 米外交問題評議会シニアフェロー(アフリカ政策担当)
ローリー・ギャレット 米外交問題評議会シニアフェロー(グローバルヘルス担当)
ロバート・マクマホン Editor, CFR.org

感染者が大量に出血しているときには、内部だけでなく、体外にも出血する。目、鼻、口、肛門、性器などのあらゆる部分から出血し、体液が出てくる。これらにウイルスが含まれている。この意味で、感染者の隔離、遺族たちが死体と接触しないようにすること、土葬ではなく火葬にすること、そして土葬せざるを得ない場合も地中深くに死体を埋めて、いかなる人物もウイルスに感染しないようにすることが重要だ。・・・だが現地の文化的伝統、風習がこれを阻んでいる。・・・医療関係者たちは、社会的に孤立し、現地の人々から軽蔑され、嫌われていると感じている。(L・ギャレット)

ギニア、シエラレオネ、リベリアは非常に弱い国家であることを認識する必要がある。いずれも長く続いた内戦を経験している。これらの地域の一部は、政府の指令を徹底できない状態にある。これら3カ国が急速な都市化を経験していることにも目を向ける必要がある。ますます多くの人が・・・都市部のスラムでひしめき合うように暮らしている。この環境では、エボラ出血熱に限らず、あらゆる病気が蔓延しやすい。(J・キャンベル)

悪いのはロシアではなく欧米だ
―― プーチンを挑発した欧米のリベラルな幻想

2014年9月号

ジョン・ミアシャイマー シカゴ大学教授

ロシアの高官たちはワシントンに対してこれまで何度も、グルジアやウクライナを反ロシアの国に作り替えることも、NATOを東方へと拡大させるのも受け入れられないと伝えてきたし、ロシアが本気であることは2008年にロシア・グルジア戦争で立証されていた。結局のところ、米ロは異なるプレーブックを用いている。プーチンと彼の同胞たちがリアリストの分析に即して考え、行動しているのに対して、欧米の指導者たちは、国際政治に関するリベラルなビジョンを前提に考え、行動している。その結果、アメリカとその同盟諸国は無意識のうちに相手を挑発し、ウクライナにおける大きな危機を招き入れてしまった。状況を打開するには、アメリカと同盟諸国は先ず「グルジアとウクライナをNATO拡大策から除外する」と明言する必要がある。

キリスト教民主主義の衰退とヨーロッパ統合の未来

2014年9月号

ヤン・ベルナー・ミューラー
プリンストン大学教授(政治学)

ヨーロッパのキリスト教民主主義者は、本質的に超国家主義的なカトリック教会同様に、国際主義志向が強く、国民国家を重視しなかった。欧州連合(EU)に象徴される戦後ヨーロッパでの超国家主義構造の形成を主導し、統合を目指すヨーロッパ政治におけるキープレイヤーとして活動したのも、こうした理由からだ。だが、ここにきて、キリスト教民主主義は力を失ってしまったようだ。その理由はヨーロッパ社会の世俗化が進んでいるからだけではない。イデオロギー的にキリスト教民主主義の最大の敵の一つであるナショナリズムが台頭し、その中核的な支持基盤である中間層と農村部の有権者が縮小していることも衰退を説明する要因だろう。欧州統合というヨーロッパの大プロジェクトが新たな危機に直面しているというのに、キリスト教民主主義は、その擁護者としての役目をもう果たせないかもしれない。

論争 ブラジル経済の将来

2014年9月号

シャノン・オニール/米外交問題評議会ラテンアメリカ研究担当 シニア・フェロー
 リチャード・ラッパー/「ブラジル・コンフィデンシャル」発行責任者
 ラリー・ローター/『台頭するブラジル―変革期にある国の物語』の著者
 ロナルド・レモス/プリンストン大学情報技術政策センターフェロー 
ルチール・シャルマ /モルガン・スタンレー・インベストメント・マネジメント

<論争の背景>
モルガン・スタンレーのルチール・シャルマがフォーリン・アフェアーズ誌で発表した「ブラジル経済の奇跡の終わり ―― 社会保障か経済成長か」(フォーリン・アフェアーズ・リポート2012年6月号)は世界的に大きな話題となった。誰もが、先進国経済が停滞するなか、今後、グローバル経済を牽引していくのは、ブラジルを含む新興国だと考えていたからだ。 だが、シャルマは「急成長を遂げる中国の資源需要に牽引されてきたブラジル経済は、中国経済の停滞とともに、下降線をたどる」と予測した。 ブラジル経済の成長軌道は、国内の石油、銅、鉄鉱石など、世界の原材料市場における需要の拡大軌道とほぼ重なりあっていると指摘したシャルマは、「経済の停滞を回避するために、ブラジル政府がリスクをとり、経済を開放し、社会的安定と経済拡大のバランスをとる方法を見つけださない限り、未来は切り開けない」と主張し、「新興市場諸国が簡単に成長できた時代、原材料価格の高騰が支えた経済成長の時代、そして社会保障を優先してもブラジルがかろうじて4%の成長を実現できた時代は終わろうとしている」と分析した。「開放と改革を進めない限りブラジルの経済成長も社会的安定も損なわれていくことになる」と。 以下は、シャルマの論文に対する4人の専門家による反論と、シャルマの再反論。(FAJ編集部)

「ロシアか欧米か」に揺れるバルカン諸国 ―― ブリュッセルへの遠い道のり

2014年8月号

エドワード・P・ジョセフ ジョンズホプキンス大学 ポールニッツスクール シニアフェロー
ヤヌス・ブガイスキ 欧州政策分析センター シニアフェロー

シアはバルカン半島の民族対立、そしてNATOとEUへの参加を果たしていない国の脆さにつけ込める状況にある。NATOやEUへのバルカン諸国の加盟をめぐってヨーロッパが優柔不断な態度をとり続け、アメリカもリーダーシップを発揮しないままであれば、バルカンにおけるロシアの選択肢を模索するプーチン大統領を大胆にするだけだろう。ロシアが策略を用いることのできる対象はモンテネグロだけではない。すでにロシアはボスニア・ヘルツェゴビナのスルプスカ共和国(セルビア人共和国)への影響力も強化している。NATOが加盟問題を放置し続けているマケドニアでも状況は不安定化している。民族的に分裂したマケドニアで不満が高まれば、隣国のコソボにもその余波が及ぶ。・・・・

ダレス・バンディ兄弟と 東部エスタブリッシュメントの終焉

2014年8月号

ジョセフ・ナイ  ハーバード大学教授

戦後の米外交を取り仕切ったと言われるダレス兄弟そしてバンディ兄弟は純然たる名門出身のいわゆる「東部エスタブリッシュメント」を象徴する存在だった。ジョン・フォスター・ダレスは1953年にアイゼンハワー政権の国務長官に任命され、彼の弟のアレン・ダレスも同じ年にCIAの初代長官に就任した。マクジョージ(マック)バンディはケネディ政権とジョンソン政権の最初の2年間に大統領補佐官を努め、彼の兄ウィリアム(ビル)バンディは、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン政権のCIA、ペンタゴン、国務省で高官ポストを歴任している。二組の兄弟に代表される東部エスタブリッシュメントの政策への影響力はどの程度で、米外交にどのような貢献があったのか、それとも弊害をもたらしたのか。彼らの特質そして問題は何だったのか。

国際金融システムの改革と ブレトンウッズの教訓

2014年8月号

ベン・ステイル 米外交問題評議会シニアフェロー (国際経済担当)

1944年のブレトンウッズ会議の目的は米ドルを基盤とするグローバル金融の枠組みを考案することだったが、本質的に、それは債権国であるアメリカと債務国イギリスの取り決めだった。70年後の現在も、米ドルは世界の通貨・為替システムの中枢として、その屋台骨を支えている。しかし、1940年代とは違って、アメリカは世界最大の債務国となり、いまや中国が世界最大の債権国として台頭している。だが、アメリカ経済は依然として力を失ってはおらず、1940年代のイギリス経済のように助けを必要としてはいない。アメリカと中国は世界の通貨・為替システムを安定化させるための改革を進めることには必ずしも前向きではなく両国の改革がうまく調整されず、そのプロセスが対決的なものになりかねない。・・・今後、貿易摩擦はますます増えていくと考えられる。

中国の人工島造成戦略の意図は何か
―― 北京の戦略と南シナ海の混乱

2014年8月号

アンドリュー・エリクソン  米海軍大学准教授、オースチン・ストレンジ  ハーバード大学博士課程

中国はスプラトリー(南沙)諸島にあるかつては海水に隠れていたジョンソン南礁を、周辺から掘り出した海底の堆積物で埋め立て、人工島を誕生させている。他の礁や砂州でも同様の埋め立てを試みており、ファイアリー・クロス礁は言うまでもなく、クアテロン礁、ガベン礁、ジョンソン北礁でもすでに何らかの建造物の存在が確認されている。なぜ、中国はこのようなことをしているのか。自国の沿岸、あるいは島から200海里を排他的経済水域(EEZ)と規定する国際法で、自国の領有権の主張を強化するためだと考える専門家もいる。しかし、より重要なのは、アイランドビルディング(人工島造成)戦略によって、永続的なインフラを誕生させれば、軍事ネットワークを築き、スプラトリー諸島への領有権対立に対抗する戦略を多角化できるようになることだろう。いまや南シナ海の混乱のなかで新たな現実が急速に形作られつつある。

反政府勢力は武器を捨てよ
―― 武力は体制変革の効果的手段ではない

2014年8月号

エリカ・チェノウェス  デンバー大学国際研究大学院准教授、 マリア・J・スティーブン  米平和研究所上級政策研究員

抑圧体制に対して社会的・政治的変革を求めるには、ストライキやデモ、座り込み、ボイコットといった非暴力的な抵抗がもっとも効果的だ。力に訴える運動は極端な破壊や流血の惨事をもたらす上に、最終的に目標を達成できないことが多い。今もカイロからキエフまで混乱と恐怖が続いているが、平和的(非暴力的)市民運動の将来については楽観すべき理由が数多くある。たとえ体制側が武力弾圧を選んだ場合でも、非暴力運動が最終的な目標を達成する可能性は依然として50%近くに達する。これに対して暴力的な抗議行動が目標を達成する可能性は20%程度しかない。これは暴力的な抗議行動では、最終的な勝利に必要な大衆の支持や、体制側からの造反者を獲得しにくいからだ。

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