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論文データベース(最新論文順)

ギリシャを搾取したオリガークたち
―― 改革なき緊縮財政の悲劇

2014年12月号

パブロス・エレフセリアディス オックスフォード大学准教授

ギリシャは緊縮財政を実行し、経済再生を果たしつつあるかにみえる。しかし、ギリシャ経済は依然としてヨーロッパでもっとも閉鎖的で競争力に乏しく、大きな経済格差問題を抱えている。市民が緊縮財政のなかで困窮する一方で、政府は今も改革を先送りしている。依然として一握りの裕福な一族、オリガーク(少数の特権階級の支配者)たちがギリシャの政治を支配し、特権的立場を維持し、権力がもたらす恩恵を政治家たちと共有している。専門職団体と公的部門の労働組合という既得権益集団も存在する。極右・極左勢力が台頭しかねない社会・経済環境にあるというのに、それでもオリガークと既得権益層は、ギリシャだけでなく他のヨーロッパ諸国さえも犠牲にして、恩恵を手にし続けている。

論争 悪いのは欧米かロシアか
―― ウクライナ危機の本質は何か

2014年12月号

マイケル・マクフォール スタンフォード大学政治学教授
スティーブン・セスタノビッチ コロンビア大学国際関係大学院教授
ジョン・ミアシャイマー シカゴ大学教授

本当のストーリーを知るには何が同じで、何が変わったかに目を向ける必要がある。何が変わったかといえば、それはロシアの政治に他ならない。プーチンは支持層を動員し、野党勢力の力を弱めようと再びアメリカを敵として位置づけた。(M・マクフォール)

モスクワはヤヌコビッチに対して反政府デモを粉砕するように促したが、結局、彼の政権は崩壊し、ロシアのウクライナ政策も破綻した。プーチンがクリミアの編入に踏み切ったのは、自分が犯した大きな失敗からの挽回を図るためだった。(S・セスタノビッチ)

EUとの連合協定は、重要な安全保障合意という側面ももっていた。協定文書は「外交と安全保障政策の段階的な統一を、ウクライナをヨーロッパ安全保障へより深く組み込むという目的に即して進めること」を提案していた。これは、どうみても裏口からNATOに加盟させる方策だった。(J・ミアシャイマー)

再び原油価格変動の時代へ
―― 原油価格の低下は何を意味するのか

2014年12月号

ロバート・マクナリー/ラピダン・グループ代表 マイケル・レビ /米外交問題評議会シニアフェロー(エネルギー・環境問題担当)

世界経済の停滞とリビアでの原油増産によって2014年夏に原油価格は低下し始めた。供給が増える一方で需要が低下すれば一般に価格は低下する。トレーダーたちはサウジが市場の安定を保つために減産に踏み切ると考え、1バレル90ドルが底値だろうと想定していた。だがサウジは価格の低下を受けいれ、拙速な減産はしないと示唆することで、市場に衝撃を与え、その結果、原油価格はさらに急激に低下した。問題は、価格変動を抑えるサウジの生産調整能力が低下していることだ。シェールオイルの増産が市場を一時的に安定化させた可能性もある。だが、数多く存在するシェールオイル企業の経済・財政状況はそれぞれ違っているために、変化に向けて一つの方向に生産を調整するのは容易ではない。サウジの生産調整能力ほど大きな市場インパクトはない。・・・

中国とロシアによる反欧米同盟
―― 中ロを結びつける六つの要因

2014年12月号

ギルバート・ロズマン プリンストン大学教授(社会学)

2012年、「中華民族の偉大なる復興」をスローガンとする「中国の夢」を表明した習近平国家主席は、中国がその中枢に位置するアジアの新しい地政学秩序を思い描いている。プーチン大統領も、旧ソビエト諸国をロシアが主導するユーラシア連合構想を表明している。重要なポイントは、両国が冷戦期の中ソ対立を再現しないように、十分に配慮していることだ。モスクワと北京の指導者たちは、欧米の影響力を抑え込むという両国が共有する利益枠組みが損なわれないようにしたいと考えている。実際、モスクワと北京は欧米秩序の正統性に対抗する外交路線をとることを心がけ、両国の野心的な外交政策については互いにコメントするのを控えている。中ロの結びつきは、一般に考えられているよりもはるかに強い。

イスラム国とイラクの現実

2014年12月号

ジェーン・アラフ アルジャジーラ・アメリカ・イラク特派員

イラクのクルド自治区議会は、(イスラム国に包囲された)シリアのクルド人を支援するために民兵組織ペシュメルガをシリアに派遣することを決議し、トルコ政府も一定数のペシュメルガがトルコを経てシリアに入り、コバニでの戦闘に参加することを認めた。一方で、コバニからの難民がトルコを経由してイラクのクルド人地域へと流れ込んでいる。その数は現地の収容能力をはるかに超えた1万1000人に達している。・・・イラク軍はすでに崩壊している。バグダッドの防衛にあたっているのはシーア派の武装組織で、イランがこうした武装集団を支援している。一方で米軍が空爆を実施している。・・・(イスラム国支配下にある地域では)イスラム国は国としての権威をアピールしようと試みている。行政組織を運営しようと試み、教師たちに教壇に戻るように促し、すべてはうまくいっているとみせかけようとしている。だが、これは真実ではない。(聞き手はバーナード・ガーズマン、cfr@orgのコンサルティング・エディター)

2014年9月初旬、アルカイダの指導者アイマン・ザワヒリは、「インドにジハードの旗を揚げる」と表明した。この意外な戦略には伏線がある。2014年の総選挙で、(西洋近代文明やイスラム教に批判的で、ヒンドゥー教徒が唯一卓越性を持つとする)ヒンドゥー至上主義を唱えるインド人民党(BJP)が勝利し、これまで反イスラム主義的な発言をしてきたナレンドラ・モディが首相に就任したからだ。BJPのヒンドゥー至上主義を基盤とする好戦性をモディが抑え込まなければ、新たに不満を抱いたイスラム教徒が、すでにアルカイダと協力している過激派組織に加わるケースが今後増えていくかもしれない。モディがヒンドゥー至上主義路線を貫き、イスラム教徒がインドの経済・文化から疎外されていると感じれば、過激主義を支持するインドのイスラム教徒が増え、イスラム原理主義台頭のポテンシャルは高まっていく。

(憲法を改正して)大統領選挙に再出馬するかどうか。確かに「なぜ大統領を続けないのか。われわれはあなたのことを信頼している」という声を耳にする。とはいえ、「後継者をうまく育てられるかどうかが、成功の指針だ」という私の両親の教えもある。人々の声と両親の教えの間のバランスをとる必要がある。・・・(私が、日本の防衛力強化をむしろ支持しているのは)第二次世界大戦後に日本がフィリピンに好ましい)行動をとってくれたからだ。戦後、フィリピンに本当の友情を示してくれた戦略的パートナー国が二つ存在した。それがアメリカと日本だった。・・・外国の人々に、フィリピンが戦略的に重要な場所に位置し、資源にも恵まれていることを伝えたい。資源の最たるものは人材だ。人々は勤勉で誠実、しかも柔軟性に富んでいる。いまや、長く抑え込まれてきたフィリピンのポテンシャルが解き放たれようとしている。

開放的な新インドネシア
―― ジョコ・ウィドド大統領との対話

2014年11月号

ジョコ・ウィドド インドネシア大統領

「(州知事時代に)オフィスにいたのは1―2時間で、この時間はひたすら文書にサインをするだけだった。これを終えると市場、河川敷、スラム、村落へと出向いた。何が必要で、何を求めているかを人々に聞いた。同じことをインドネシアのためにもできる。スカイプやテレコンファレンスを利用できる。・・・(経済領域では)深海港と鉄道への投資を重視したい。可能であれば国の予算を利用するが、そうできなければ外国からの投資を募る。すでにこのプロジェクトに外国の投資家は大きな関心を示している。・・・インドネシアは、・・・あらゆる諸国の投資に門戸を開いている。私にとって、人々に雇用を与え、よりよい生活を提供するために、経済成長を実現することは極めて重要だ」。

ロシア編入後のクリミア
― ウクライナとロシアに揺れる半島

2014年11月号

テレサ・ボンド(ペンネーム) 政治分析者

地理的にはウクライナとつながり、ロシアとは海で隔てられているために、依然としてクリミアは水資源、製品、食肉、電力を含む、ほぼすべてをウクライナからの供給に依存している。だが、ウクライナは次第にクリミアへの締め付けを強化している。しかも通貨がウクライナのフリヴニャからロシアのルーブルに切り替えられたことで、食糧価格は一気に50%も上昇し、いまやチーズや魚の価格はかつての2倍に、ビールとウオッカの価格は3倍に高騰している。一方でクリミアの消費者が直面している問題をロシアが解決できるかどうかも、はっきりしない。地理的・ロジスティックな制約が常につきまとうからだ。ロシアに組み込まれたことで政治的にもっとも追い込まれているのは、半島の人口の13%を占めるタタール人マイノリティだ。タタール人の指導者は追放され、タタール人市民も厳格な監視下に置かれている。・・・

トルコとクルド人のジレンマ
―― イスラム国と軍とクルド人問題

2014年11月号

ハリル・カラベリ 中央アジア・カフカス研究所  シニアフェロー

イスラム国が作り出すトルコ・シリア国境地帯の混乱を前に、トルコ国内の政治バランスは崩れ、いまや軍部が大きな力をもちつつある。一方で、政府と国内のクルド人勢力との和平プロセスはいまや破綻しかねない状況にある。「シリアのクルド人に対するイスラム国の攻撃にトルコ政府は水面下で加担している」とみなすクルド人の怒りはピークに達している。一方、国境地帯の混乱を前に、エルドアンは国内のクルド人の動きを警戒するトルコ軍の見方と提言に配慮せざるを得ない状況にある。トルコ軍は軍のレッドラインが「トルコ国家の統合と領土保全を守ること」であることを改めて強調している。これはシリアとの国境線だけでなく、「クルド人に自治権を与えることを軍は認めない」というメッセージに他ならない。トルコは一体どこへ向かうか。その多くはクルド人が「政治的連帯」のパートナーをどこに求めるかで左右される。

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