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論文データベース(最新論文順)

市場創造型イノベーションのパワー
―― 経済を成長させるイノベーションとは

2015年2月号

ブライアン・C・メズー  ハーバード・ビジネススクール フェロー クレイトン・M・クリステンセン ハーバード・ビジネススクール教授 デレク・ファン・ビーバー ハーバード・ビジネススクール 上級講師

雇用を創出するのは社会でも政府でも産業でもない。それは企業とその経営者たちだ。支出、投資、雇用の判断を下すのは起業家と企業に他ならない。そしてこれらの判断が市場創造型イノベーションへと向かえば、国は持続的成長と繁栄の恩恵に浴する。その好例が戦後の日本経済だ。これまで日本の戦後経済の成功は、国家のプライドと力強い労働倫理、政府のビジョン、優れた科学・技術教育といった要因で説明されてきた。だが、その成功はバイク、自動車、家電、事務機器、鉄鋼などのセクターにおける市場創造型イノベーションに起因していた。ホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハというバイクメーカーは国内市場での需要の掘り起こしを競い合い、その後、同じ戦略を外国市場でも試みた。家電部門(パナソニック、シャープ、ソニー)、自動車部門(日産とトヨタ)、そして事務機器部門(キャノン、京セラ、リコー)も、これと同じパターンで成功した。市場創造型イノベーションで戦後日本は成功を収め、このモデルが世界に広がっていった。・・・

プーチン世代の若者たち
―― ロシアエリート予備軍の現状維持志向

2015年2月号

サラ・E・メンデルソン  戦略国際問題研究所 人権イニシアチブ・ディレクター

ロシアのエリート校の大学生たちは政治に対して非常に懐疑的であるにも関わらず、強い現状維持志向をもっている。彼らの関心は大学でいい成績をとって、政府か大手企業に就職することだけで、チュニジアやウクライナなど世界中で若者が自由と尊厳を求めて抗議行動を起こしていることについて、感銘を受けることはない。むしろ大衆運動は自発的には起きないと考えている。要するに、反政府運動はアメリカが裏で糸を引いているというプーチンの確信を、彼らも共有している。こうした若手エリート層の台頭は、ロシアにおける民主主義の覚醒を少なくとも一世代にわたって遅らせることになるだろう。

精神障害の経済・社会コストに目を向けよ
―― 見えないコストと偏見、放置される対策

2015年2月号

トーマス・R・インセル  米国立精神衛生研究所 所長 パメラ・Y・コリンズ 米国立精神衛生研究所 部長 (グローバル・メンタルヘルス) スティーブン・E・ハイマン ハーバード&MIT「ブロード研究所」 所長

精神障害は直接・間接に世界経済に年間2兆5000億ドルのコストを強いている。2030年までに精神障害のコストは、心臓疾患、ガン、糖尿病、そして呼吸器系疾患が強いるコストの合計を上回る6兆ドルへと増大すると予測されている。だが、この迫りくる危機が適切に認識されていない。これは、富裕国では精神障害が個人や家族が直面する問題として狭義にとらえられ、低所得諸国や中所得諸国では先進諸国の病気とみなされているからだ。精神障害の問題をこのまま放置すれば、いかに大きな問題が作り出されるかを理解する必要があるし、「メンタルヘルスの改善がより健康な体を保つことにつながるという事実」に焦点を合わせた対策をとるべきだ。人々の精神障害への認識と議論をさまざまな角度から変えていく必要がある。

サウジの石油戦略シフトとそのリスク
―― 原油低価格戦略にリヤドは耐えられるのか

2015年2月号

ビラル・Y・サーブ  アトランティック・カウンシル シニアフェロー  ロバート・A・マニング   アトランティック・カウンシル シニアフェロー

自信過剰に陥っているとき、あるいは、次第に懸念を募らせつつある時期には、いかなる政府も大きな賭に打って出ることが多い。国内では変革を求める動きかあり、隣接するイエメンでは紛争が起きている。そして、イスラム国がさまざまな問題を作り出している。サウジは必要以上に野心的になっているのかもしれない。緊張と混乱と不確実性が高まっているタイミングで、原油の低価格化を放置して、大胆な地政学的賭けに出ている。リヤドはグローバル市場におけるサウジ原油のシェアを増やそうと考えているのかもしれない。だが、この戦略の最大のリスクは国内にある。原油価格が1バレル55ドル前後で推移すれば、2015年のサウジの歳入から890億ドルが消し飛ぶ。予算の50%に達している社会保障給付や公務員のサラリーが削減されるのは避けられず、これが予期せぬ事態を引き起こす恐れもある。

ドイツの極右運動ペギーダが動員するデモ隊は「重税、犯罪、治安問題という社会的病巣を作り出しているのはイスラム教徒やその他の外国人移民だ」と批判している。「ドイツはいまやイスラム教徒たちに乗っ取られつつある」と言う彼らは、「2035年までには、生粋のドイツ人よりもイスラム教徒の数の方が多くなる」と主張している。実際には、この主張は現実とはほど遠い。それでもドイツ人の57%が「イスラム教徒を脅威とみなしている」と答え、24%が「イスラム系移民を禁止すべきだ」と考えている。「ドイツのための選択肢」を例外とするあらゆるドイツの政党は、ペギーダを批判し、彼らの要求を検討することさえ拒絶している。だが今後、右派政党「ドイツのための選択肢」の支持が高まっていけば、ペギーダ運動が政治に影響を与えるようになる危険もある。

フランスのアルジェリア人
―― フランス紙銃撃テロの教訓

2015年2月号

ロビン・シムコックス  ヘンリー・ジャクソン・ソサエティ リサーチフェロー

17人が犠牲になった2015年1月のフランス紙銃撃テロは、イスラム過激派がフランスを対象に実施した初めてのテロではない。実際には、1995年以降、フランスで起きたイスラム過激派のテロによって12人を超える人が犠牲になり、数百人が負傷している。しかも、これはフランスに留まる話ではない。最近の歴史から明らかなのは、ジハーディストが攻撃を正当化する大義をつねに見いだすということだ。2011年のフランスによるリビア介入でなければ、2013年のマリへの介入が大義に持ち出される。外交政策でなければ国内政策が、ヘッドスカーフ(ヒジャーブ)の公共空間での禁止でなければ、侮辱的な風刺画を描いたことが攻撃の大義にされる。この理由ゆえに、今回のテロ攻撃から教訓を学ぼうとしても、それを政策として結実させるのは難しい。テロリストは攻撃を常に正当化しようとする。・・・

イノベーションと起業家
―― その虚構と実像

2015年2月号

ジェームズ・スロウィッキー ニューヨーカー誌 スタッフライター

優れたイノベーションは優れたアイディアだけでなく、そのアイディアを基に実際に人々が利用するモノを作り出し、それを人々に届ける道筋を特定することで実現する。つまり、イノベーションを突き動かすエンジンは、個人の傑出した才能よりも、チームワークなのだ。イノベーションには、様々な分野の多様な専門家で構成される強いチームの存在が必要だ。最近ではイノベーションの停滞という言葉も聞かれ、その理由を起業家の野心が小ぶりになっていることに求める投資家もいる。いまやスタートアップ企業の多くは、誰もがやっていることを試み、自分たちの方が少しばかり他者よりも優れていればと期待する程度だ。起業家は「豊かになるために何が必要か」だけでなく、「どのような人生を送りたいか」を考える必要がある。数あるアプリの一つを開発したかっただけなのか、それとも、社会を変えるような大きな何かを考案するのか。・・・

ノルディックモデル
―― ニクラス・ゼンストロームとの対話

2015年2月号

ニクラス・ゼンストローム  スカイプ創業者、アトミコ代表

成熟した産業の企業は、(財やサービスを)わずかしか改善できないことが多い。少しは成長し、生産効率も改善しているかもしれないが、基本的に同じような製品を作り続けている。一方、起業家は「異なる方法でこれをやるにはどうすればよいか。問題をどう解決するか。既存の企業ではなく、新しいプレイヤーとして」と白紙に書き込む。既存のインフラもなければ、テクノロジーもない。どうすれば、もっと効率的にうまくできるかを考える。イノベーションを試み、新しいビジネスモデル、そして効率を10倍に高め、既存の企業の10分の1の価格で財やサービスを提供する。こうして起業(とイノベーション)は経済を前に進める力強い牽引役を果たすことになる。・・・

イノベーティブ国家を構築するには
―― 政府がベンチャーキャピタルを見習うべき理由

2015年2月号

マリアナ・マッツカート サセックス大学科学政策研究所(SPRU) 教授(イノベーション経済学)

イノベーションを推進するために国は何をすべきか。「余計な口出しをしないことだ」と考えられてきた。この見方は広く受け入れられているが、ひどく間違っている。現実にはイノベーションを通じて経済成長を遂げている国は、歴史的に政府が企業のパートナー役、それも多くの場合企業が嫌がるリスクを進んで引き受ける大胆なパートナーの役目を果たしてきた。むしろ、技術革新の方向性を見極めて、政府がその領域に投資できる仕組みを形作るべきだ。公的投資に関するこれまでの短絡的考え方を放棄し、政府と民間を分けて考えるのをやめるべきだろう。イスラエルやフィンランドのように、国がベンチャーキャピタルのように、融資先企業の株式を保有することもできる。政府は、イノベーションを推進する未来志向の政府機関を設立し、これを、国内における創造性、応用、実験の拠点とすべきだろう。・・・

イスラム国に参加した民主活動家たち
―― シリアで何が起きているのか

2015年2月号

ベラ・ミロノバ メリーランド大学博士課程、ローブナ・ムリエ  シリア人フォトジャーナリスト、リチャード・ニールセン MIT准教授、サム・ウィット ハイポイント大学准教授

バッシャール・アサドの独裁体制を打倒しようと、平和的な反政府運動を組織した若者たちは、アサドの残忍な弾圧を前に自由シリア軍(FSA)に参加して銃をとった。だがその多くは、すでにFSAを後にして、イスラム国やヌスラ戦線などのジハード主義集団に身を投じている。なぜ民主化運動に参加した若者たちが、イスラム過激派のメンバーになってしまったのか。FSAに対する不信、アサド打倒の目的を共有していることなどが、その理由のようだ。実際、いまはイスラム過激派のメンバーとして戦っているものの、彼らの目的は依然として「アサドを倒すこと」にあるようだ。逆に言えば、アサド体制を打倒すれば、彼らは、イスラム主義国家の建設を含む、ジハード主義集団が掲げる広範な目的に背を向けるかもしれない。だが、すでにイスラム過激派はこの問題への対策を取り始めている。・・・

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