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論文データベース(最新論文順)

CFR Events
ギリシャ危機と中国発世界不況
――世界経済アップデート

2015年6月号

ルイス・アレクサンダー
野村證券インターナショナル、 マネージングディレクター ピーター・フィッシャー
前財務省次官補(国内金融) エレン・ゼントナー
モルガンスタンレー、 マネージングディレクター セバスチャン・マラビー
米外交問題評議会地政経済学センター所長

ヨーロッパは、ギリシャ政府が到底満足しない程度の融資しかオファーしない。ここでギリシャは「ヨーロッパの条件を受け入れてユーロに留まるか、あるいは、別の道を選ぶか」を決めなければならなくなる。だが私は、最終的にギリシャはユーロ圏に留まるとみている。・・・(L・アレクサンダー)<br>

中国のGDPの50%は新規投資だ。つまり、次年度に前年度と同じ数と規模の高速道路、病院、道、橋、トンネル、工場、学校しか作らなければ、経済の半分は成長しなくなる。依然として成長の余地は残されているが、そう遠くない将来に、中国経済は縮小し始める。・・・いずれバランスシートを合理的なレベルへと縮小させなければならなくなる。このタイミングで中国発世界不況が起きる。(P・フィッシャー) <br>

グローバルな「ローフレーション」を前に世界では2014年12月以降、30を超える国の中央銀行が量的緩和、金融緩和、あるいは為替介入を試みている。結局、この状況ではアメリカ経済はドル高という重荷を引き受けざるを得ない。アメリカ経済のインフレ率もそう高くないが、ドル高をある程度容認せざるを得ない環境にある。(E・ゼントナー)

破綻国家へと向かうイエメン
―― イエメンにおけるサウジの挫折

2015年6月号

ファリア・アル・ムスリム
カーネギー中東センター客員研究員

空爆では何も解決しない。国際コミュニティと地域諸国がイエメンを救うためのコミットメントを示さない限り、この国はシリア、リビア、イラクのような混乱、あるいはそれ以上のカオスに陥り、これら3カ国の問題が重なり合う無残な空間と化すかもしれない。イエメンに介入せざるを得なくなったこと自体、・・・サウジの失敗を物語っている。アラブ世界でもっとも豊かな国がアラブ世界の最貧国の政治ダイナミクスを変えるために空爆を実施せざるを得なくなった。現在の危機は、この数年にわたって地域諸国がイエメンの混乱に傍観を決め込んだことによって直接的に引き起こされている。仮にフーシ派を抑え込めたとしても、劣悪な生活レベル、少数派の政治的周辺化、弱体な政府といった紛争の根本要因は残存する。すでに1000人のイエメン人が空爆の犠牲になり、数千人が負傷し、数十万人が難民化している。

中国の新シルクロード構想
―― 現実的な構想か見果てぬ夢か

2015年6月号

ジェイコブ・ストークス
ニュー・アメリカンセキュリティ研究所フェロー

シルクロード構想は、アメリカのアジア・リバランシング戦略への対抗策として考案された。陸と海の新シルクロードに沿って巨大な経済圏を形成しようとする、一帯一路とも呼ばれるこの構想は、アジアインフラ投資銀行(AIIB)による資金的裏付けをもち、中国の政治・経済エリートにも支持されている。相手国のインフラ整備を助けるだけでなく、中国(の国有企業)が抱え込んでいる過剰生産能力のはけ口としての外国市場を切り開き、人民元の国際的役割を強化できる可能性もある。いずれ、中国が主要な役割を担う非欧米型国際ネットワークの構築という北京の野望を実現する助けになるかもしれない。しかし、この構想は、ロシアのユーラシア経済連合、インドの対外構想と直接的に衝突するし、結局は、アフリカや中東での紛争に引きずり込まれ、中国のパワーを時期尚早に広く薄く拡散させることになるだろう。・・・

AIIBを恐れるな
―― 米日がAIIBに参加すべき理由

2015年6月号

フィリップ・Y・リプシー スタンフォード大学助教授

欧米は、経済的・地政学的に台頭する中国がアジアインフラ投資銀行(AIIB)を立ち上げた意図を疑い、既存の国際的金融機関の役割を切り崩そうとしているのではないかと懸念している。たしかに、アメリカが世界銀行を通じて、日本がアジア開発銀行(ADB)を通じて優位を手にしてきたのと同様に、AIIBは中国に優位を与えることになるだろう。だが、多国間開発銀行で主導権をもつことは大国の証のようなものだ。重要なポイントは、「多国間開発銀行の設立か、あるいは空母の調達のいずれかで、中国が影響力と国際的な名声を確立しようと試みるとして、どちらの道筋が好ましい」とわれわれが考えるかにある。米日がAIIB構想に参加すればより大きな利益を確保できるし、AIIBの今後のコースに影響を与えることもできるだろう。

日本の新しいエネルギーミックス
―― 原子力とソーラーを組み合わせよ

2015年6月号

バラン・シバラム  米外交問題評議会フェロー

ソーラーパワーの電力網へのアクセス制限や固定価格買取制度の見直しなど、日本ではソーラーパワー拡大を阻む逆風が吹いている。しかし、「原子力かソーラーか」ではなく、この二つを組み合わせれば、2020年までに日本は化石燃料輸入を3分の1減らすことができるし、電力需要の3分の1を満たせるようになる。日本の電力会社は、ソーラー電力を買い取って電力網に組み込むよりも、安定した資本収益を期待できる一元的な原発施設のほうが好ましいと考えているのかもしれない。しかし、原子力とソーラーを組み合わせてともに推進すれば、エネルギー安全保障を強化し、経済を拡大し、地球温暖化対策上のゴールに近づき、他の諸国が踏襲できるモデルを示すことができる。日本は、安全性に配慮しながら原子力による電力生産を強化するとともに、ソーラーエネルギーを育んでいく長期的なエネルギービジョンを示すべきだろう。

ヨーロッパの人道主義はどこへいった
―― ボート難民が揺るがす欧州の理念

2015年6月号

ファブリジオ・タッシナーリ
デンマーク国際関係研究所(DIIS) シニアリサーチャー
ハンス・ルチェット
デンマーク国際関係研究所(DIIS) シニアリサーチャー

リビアのカダフィ政権崩壊後、2011年半ばまでに3万のリビア人がイタリアのランペドゥーザ島へと押し寄せた。フランス当局は、移民たちが(イタリアを経由して)フランスに入国するのを阻止しようと、イタリアとの国境線を一方的に閉鎖した。2014年には、地中海を経てヨーロッパへ向かう難民の数は20万を超えるようになり、その途上で犠牲になる人々も3500人に達した。だが、リビアで拠点を築きつつあるイスラム国がヨーロッパを南から脅かす危険が生じているために、ヨーロッパは、アフリカからの難民流入を「対処すべき人道危機」としてではなく、むしろ封じ込めるべきリスクとみなしている。このまま、ヨーロッパがボート難民を受け入れる方法を見出せなければ、地中海は再びヨーロッパの安定を脅かすアキレス腱になる。開放的国境線という近代ヨーロッパの中核理念が、困窮する難民たちによって変化していくとすれば、転覆したボートが、ヨーロッパの失敗を象徴することになるだろう。

日中軍事衝突のリアリティ
―― 日中危機管理システムの確立を急げ

2015年5月号

アダム・P・リッフ インディアナ大学助教(国際関係論)
アンドリュー・S・エリクソン 米海軍大学准教授(戦略研究)

東シナ海をめぐる日中関係は、一般に考えられている以上に緊張している。中国軍の高官が言うように、「わずかな不注意でさえも」、世界で2番目と3番目の経済国家間の「予期せぬ紛争に繋がっていく恐れがある」。もちろん、日中はともに紛争は望んでいない。だが、東シナ海の海上と上空の環境が極端に不安定である以上、誤算や偶発事件が大規模な危機へとエスカレートしていく危険は十分にある。世論調査結果をみても、日中間の敵意はこれまでになく高まっている。しかも、偶発的衝突を制御していく力強い危機管理メカニズムが存在しない。中国軍と自衛隊の高官たちでさえも、危機エスカレーションリスクが存在することを懸念している。危機管理メカニズムが必要なことは自明だが、日中両国にそれを導入する政治的意思があるかどうか、依然として不透明な状況にある。・・・

実用化に近づいたソーラーパワー
―― なぜソーラーは安く実用的になったか

2015年5月号

ディッコン・ピンナー マッキンゼー サンフランシスコ・オフィス ディレクター、マット・ロジャース マッキンゼー サンフランシスコ・オフィス ディレクター

いまやソーラーパワーは他の電力資源と価格的に競い合えるレベルに近づきつつあり、2050年までにソーラーエネルギーは、世界の電力の27%を生産する最大のエネルギー資源になると予測されている。ソーラーパワーの急激な台頭を説明する要因としては、政府の促進策、低価格化と効率化、そして技術革新などを指摘できる。今後も多くの市場で、ソーラーパワーの電力生産コストは8―12%低下すると考えられているし、蓄電技術の進化もソーラーパワーの台頭を支えることになるだろう。電力価格が低下すれば、電力会社は再編を余儀なくされるが、ソーラーパワーの普及によって、温室効果ガスの排出量削減という環境上の大きなメリットも期待できる。太陽光に恵まれた地域における新しい住宅のほとんどの屋根にソーラーパネルが設置されるとしても、いまや不思議はない。

アメリカのエリート大学は若者に教養と規律を与える場ではなくなっている。大学は学部生を教える仕事を薄給の非常勤講師に任せる一方で、学生とはほとんど接することのない著名な研究者をリクルートすることに血道をあげている。経験が豊かで献身的な教員の指導のもとで、学生たちがさまざまな概念について意見を交換し、人生の目的を考え、それまで常識と考えてきたことに疑いを抱くような経験をさせるという役割はもはや重視されていない。親にも問題がある。いまや十代あるいはそれ未満の子供時代でさえ、名門大学に入るための激しい競争のなかにいる。・・・完璧な経歴づくりは、プレスクール選びから始まり、小中学校を通じて続く。これらが社会格差を増大させ、コミュニティ意識を希薄化させている。この歪んだ構造が教育上の問題だけでなく、政治・社会問題も作り出している。

トルコのサウジ接近と対イラン関係
―― トルコの真意、サウジの思惑

2015年5月号

アーロン・ステイン 英王立統合軍防衛安全保障問題研究所アソシエートフェロー

サウジは、(イランが支援していると言われる)イエメンのシーア派武装集団フーシ派に対する空爆を実施し、サウジと同じスンニ派のトルコは、サウジの空爆を支持すると最近表明した。それでも、トルコがサウジの地域的な野心のために、イランとの関係を犠牲にするとは考えにくい。トルコは中東におけるイランの大きな役割を事実上受け入れ、これに挑戦しようとは考えていない。トルコは、サウジほどイランの核開発プログラムを警戒していないし、イラン同様にクルド人問題を抱え、イランにエネルギー資源を依存している。一方、(ムスリム同胞団の)政治的イスラム主義をめぐるサウジとトルコの対立は解消していない。イエメン空爆に対するトルコのサウジへの歩み寄りは、戦争が続く中東でトルコがとってきたこれまでのバランス戦術の継続とみなすべきで、抜本的な路線変更ではない。

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