フランスのユダヤ人
―― シオニズムとフランスへの忠誠
2015年12月号
現在と過去の反ユダヤ主義には多くの違いがあるが、基本的な構造は似ている。その背景には、政治と経済の危機があるし、世界中の民主主義国がアイデンティティーとその純度を重視する運動の圧力にさらされていることにも関係がある。そして、人種差別によって多くの人の機会が制限され、各国内の経済格差が劇的に拡大している。現代の反ユダヤ主義を突き動かしているのは、こうした社会の現象と風潮であり、イスラム教対ユダヤ・キリスト教の「文明の衝突」ではない。これをユダヤ人だけでなく、社会全体の問題として捉えなければならない。かつて自分がユダヤ人であることを公言して、フランスの首相になったレオン・ブルムも、「ユダヤ人問題と社会全体の問題間の区別はない」と考え、社会問題へ同じアプローチをとった。この思想を現在のフランス政府も引き継いでいる。