政治家アンゲラ・メルケルの光と影
―― 難民危機で問われる政治的立場
2016年2月号
アンゲラ・メルケルはメリハリがある政治家ではない。しかし、とにかく落ち着いている。政策も野心に満ちた大胆なものと言うよりも、穏やかさを特徴とする。彼女の政権が、ドイツ経済が安定していることを追い風としてきたのは間違いなく、プーチンとの対話チャンネルを維持していることも、彼女の対外的影響力を支えてきた。実際、ドイツはロシアにとって友人にもっとも近い存在であり、メルケルがロシア語を話せることもあって、ワシントンは実質的にドイツにあらゆるロシアとの交渉を代弁させている。だが、彼女の難民受け入れに寛容な路線を前に、キリスト教民主同盟内の反発が高まり、ドイツ市民の不満も高まっている。彼女の路線は「道義的帝国主義」と批判され、今後、極右勢力が勢いづいていくかもしない。・・・・市民の苛立ちは高まっているが、依然としてメルケルは潜在的な後継者を圧倒する力をもっている。