欧州のシルバー民主主義と年金危機
―― その弊害をいかに緩和するか
2016年9月号
ヨーロッパの若年層が「自分たちも親世代と同じように寛大な年金を受けとれる」と考えていたのはそう昔の話ではない。だが、現実にはヨーロッパ全域で、未来の世代に重荷が押しつけられ、高齢者の立場が「政治的に」優遇されている。年金危機対策にしても、結局は、「将来の年金受給者」を対象とする見直しが行われただけで、引退世代の社会保障は温存されている。イギリス、イタリア、スペイン、フランスなどで実施された一連の制度改革は、いずれも現在の年金受給者には何の影響も与えない。しかも実際には、ヨーロッパの退職者の所得の中央値は現役労働者の所得の中央値と等しく、退職者の方が高い国さえある。年金制度の破綻を防ぐには、財政の持続可能性、世代間の連帯、世代間の公正という三つの原則間のバランスをとる必要がある。