イギリスの新しい国際的役割とは
―― 衰退トレンドを克服するビジョンを
After Empire ―― An Era of British Decline
2016年3月掲載論文
イギリスの政治階級は、バックミラーを見ながら、将来を考えようとしている。このために、変化する世界におけるイギリスの地位について考えることができずにいる。この現状の根底にあるのは、国家アイデンティティの危機だ。歴史的に、イギリスは世界の覇権国からの凋落を正面から受け止めてこなかった。この国の世論調査では依然として「我が国は大国であり続けることを望むべきか」という問いかけがなされる。2015年の調査でも63%がイエスと答えているが、世界は、大国としてのイギリスの時代が終わっていることを知っている。イギリスの衰退を覆すには、過去を前提にするのではなく、未来から現在を捉える必要がある。ロンドンは、イギリスのことを「グローバル化を促進するとともに、その問題に対処していくことを目的とする思想と議論を提供し、橋渡し役を担う存在にすること」を考えるべきだろう。
- 指針を失った外交
- アイデンティティ危機
- イギリスの実力
<指針を失った外交>
イギリスは価値のないプレイヤーへと転落していく危険に直面している。欧州連合(EU)からの脱退の是非を問う国民投票が(2016年6月に)実施されるため、世界最大の経済圏(EU)のメンバーシップが不安定化するリスクを抱えているし、スコットランドにおけるナショナリズム(と分離独立志向)の台頭ゆえに、イギリスの領土保全の先行きさえはっきりしない。(経済利益ばかりを追い求める)昨今のイギリス外交は、その消極性と短絡性ゆえに広く嘲笑の対象にされている。
2015年5月にキャメロンが再選を果たして間もない時期に、CNNのファリード・ザカリアは、「イギリスは大国(国際パワー)としての地位を維持していくのをもはやあきらめたようだ」とコメントし、ロス・ドゥザットもニューヨーク・タイムズ紙のコラムで「イギリスの自殺」という論説記事をまとめ、かつての大国を偲んでみせた。
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