Keith Kristoffer Bacongco from Davao, Philippines/Creative Commons

ドゥテルテ大統領の挑戦
―― マニラの強権者の思惑を検証する

リチャード・ジャバド・ヘイダリアン
デ・ラ・サール大学准教授(政治学)

Thrilla in Manila ―― The Promise and Peril of Duterte's First Three Months

Richrad Javad Heydarian
フィリピンのデ・ラ・サール大学准教授(政治学)。フィリピン下院政策顧問。新著にAsia's New Battlefield: The USA, China and the Struggle for the Western Pacific(Zed Books 2015)。

2016年11月号掲載論文

強気のアウトサイダーだったドゥテルテは、フィリピンの有権者たちのエスタブリッシュメント層に対する反発をうまく追い風にして、大統領ポストを射止め、その後、瞬く間に権力基盤を固めていった。最近の調査では、ドゥテルテの支持率は91%という、空前のレベルに達している。彼の「対麻薬戦争」にいくら世界が懸念を示しても、外交的にはあり得ない発言を繰り返して非難されても、国内の人気や影響力が衰える気配はない。「フィリピンの抱える根本的な問題を解決できるのは強気で断固としたリーダーだけだ」という民衆の意識が高まっているためだ。ドゥテルテは、欧米でどう思われようと、残虐な麻薬取締りで民衆の支持が得られる限り、路線を見直すことはないだろう。公正に言えば、ドゥテルテは麻薬撲滅以外にも、環境、交通渋滞、インフラ整備など、さまざまな領域で積極的な取り組みをみせている。外交領域では、アメリカとフィリピンの関係の「ニューノーマル」を確立することを決意しているようにみえる。・・・

  • 民衆の支持が支える強権者
  • 無礼な男を支持する理由
  • 強権者の改革路線
  • 対米関係の見直し
  • 中国かアメリカか

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