ギャンブラーとしてのプーチン
―― ロシアのクリミア編入プロセスを
検証する
Why Putin Took Crimea
―― The Gambler in the Kremlin
2016年6月号掲載論文
プーチンがみせた一連の衝動的な対応からみて、クリミア編入は領土拡張計画の一環でもなければ、NATO拡大への対応でもなかった。ヤヌコビッチ政権が倒れて以降のウクライナ危機をめぐるプーチンの最大の懸念は、黒海艦隊が終結する、クリミアのセバストポリ軍港のリース契約をウクライナが打ち切ることだった。逆に言えば、キエフが軍港の2040年までのリース合意を尊重するとモスクワに保証していれば、この2年間のロシアと欧米の関係悪化は避けられたかもしれないし、ロシアがクリミアの編入というハイリスクの戦略をとる必要もなかったかもしれない。問題は、クリミアへの介入と編入が、プーチンが管理可能な脅威をめぐってさえ過大な戦略リスクを引き受けるようになったことを象徴していることだ。ウクライナであれ、シリアであれ、プーチンは危機に大胆かつ衝動的に対応することで、ロシアと世界に新たな危機を作り出している。
- クリミア編入をめぐる三つの動機
- ウクライナのNATO加盟
- ロシア帝国再建の野望
- 編入をめぐる混乱
- トルコとの衝突?
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