サウジと米大統領選挙
―― クリントン、トランプ、リヤド
How Saudi Arabia Sees the U.S. Presidential Election
2016年5月号掲載論文
「ジョージ・W・ブッシュ政権が残した(中東における)負の遺産を清算すること」を自らの中東における任務に掲げたオバマも、結局は負の遺産を次期米大統領に委ねることになりそうだ。シリア紛争への関与を躊躇い、イランとの核合意を模索したことで、サウジとアメリカの関係は極度に冷え込み、サウジでは、オバマは近年における「最悪の米大統領」と呼ばれることも多い。次期大統領候補たちはどうだろうか。サウジの主流派メディアは、イスラム教徒の(アメリカへの)移民を禁止することで「問題」を緩和できると発言したトランプのことを「米市民のごく一部が抱く懸念や不満を煽りたてる問題人物」と描写している。クリントンに期待するとしても、その理由は、彼女がトランプではないというだけのことだ。ますます多くのサウジ市民が、安全保障部門でのアメリカの依存を見直すべきだと考えるようになっている。・・・
- オバマに対する反発(部分公開)
- サウジはトランプをどうみているか
- オバマが残した負の遺産
- サウジの安保独立路線
<オバマに対する反発>
「依然としてサウジはアメリカの友人だろうか」。2015年3月にアトランティック誌のジェフリー・ゴールドバーグは、オバマがサウジアラビアの外交と国内政策を批判していると指摘し、サウジとアメリカの関係を問い直す記事を発表した。この記事にサウジのメディアとソーシャルメディアは強い反発を示した。
これまでのところ、もっとも顕著な反論を示したのはトゥルキ・アル・ファイサル王子だ。この30年にわたってサウジの情報機関のトップを務め、アメリカとイギリスで大使を務めた経験もある彼は、英字紙アラブ・ニュースで容赦ないアメリカ批判を展開した。オバマが示したサウジとの関係の価値に関する見方、特にオバマがサウジを「ただ乗りをしている同盟国」と描写したことに激しく反発した(「サウジはアメリカ主導の対イスラム国作戦で十分な働きをしていない」とオバマは示唆したかったのかもしれない)。オバマは「サウジは世界に数多くあるワッハーブ派の宗教・教育施設に資金を提供することで、イスラム過激派集団の台頭に(間接的に)手を貸している」とも示唆した。サウジの官僚たちは、自国の対テロ作戦、特に、国内で数百人のイスラム国支持者を逮捕していることからみても、「欧米に対テロへの試みが十分ではないと批判されるいわれはない」と苛立ちを強め、内外の宗教・教育機関への支援という「適切な措置」は、過激派のイデオロギーを煽りたててはいないと反発した。・・・
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