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米大学生への留学の薦め
―― 国際問題と外国への感性を高めるには

サンフォード・J・アンガー ガウチャー大学名誉学長

The Study-Abroad Solution
―― How to Open the American Mind

Sanford J. Ungar ガウチャー大学名誉学長、ハーバード大学とジョージタウン大学でも教鞭を取る。ルミナ財団フェロー。

2016年4月号掲載論文

アメリカ人には、外国に関する知識や理解がほぼ例外なく欠落している。しかも外交予算は削られ、メディアも国際報道を減らしている。いまや大統領選挙の論争においてさえ、外交問題について十分な情報に基づく議論を聞くことはない。このために、アメリカの価値を反映し、大衆も支持するような、冷静で一貫性のある外交政策の策定と実施が妨げられている。必要なのは、大学のカリキュラムの一環として外国に留学し、貴重な知見を得てアメリカに帰ってくる大学生を大幅に増やすことだ。アメリカの現在そして過去のリーダーの多くは、若くて感受性が強いときに、外国に留学し、外国でさまざまな活動に従事した経験を持っている。この事実は、企業、政府、科学、教育、非営利組織、芸術など分野を問わない。留学生の増加をアメリカの社会と外交政策の改善につなげていくには、留学プログラムへの参加者の数と多様性を大幅に拡大する必要がある。

  • 外国を知らないアメリカ人
  • 世界を知ることの意義
  • なぜ留学が増えないのか
  • 米大学の理念と留学
  • 正しい方向への第一歩
  • 国際社会とアメリカ

<外国を知らないアメリカ人>

インターネット時代の到来で、世界は以前よりもはるかに小さく感じられるようになった。しかし多くのアメリカ人は、今も世界のことをよく知らない。むしろこれまで以上に世界から隔絶されているようにみえる。これには理由がある。約25年前に冷戦が終結すると、米議会は「世界はより安全になった」と誤解して、外交予算を削減し、複数の在外公館を閉鎖した。報道機関とりわけ民間のテレビ局も「視聴者の関心が低下していること」を理由に、国際ニュース報道を減らし始めた。奇しくも、それはマスメディアの斜陽化と時を同じくしていた。

9・11と、それに続くアフガニスタンとイラクでの戦争によって国際情勢に再び関心が集まったが、それも長続きはしなかった。世界が新たな課題に直面しているのに、アメリカの国際問題の捉え方は、歴史的な背景やその問題に対する深い理解を欠いたものへと劣化している。議会選挙、あるいは大統領選挙においてさえ、外交問題について十分な情報と洞察に基づく議論を聞くことはない。一国のリーダーを目指す多くの政治家が、外交の複雑さはもちろん、外交政策の構成要素さえ理解していないように思える。外国語を話せる候補者は、疑わしい人材のようにさえみなされる。・・・

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