ヨルダンとイスラム国
―― なぜヨルダンでは大規模テロが起きないか
ISIS Meets Its Match?
2016年4月号掲載論文
サウジアラビア、イラク、シリアとは違って、これまでのところヨルダン国内ではイスラム国による大規模なテロ攻撃は起きていない。国内のイスラム国関連の事件による犠牲者数は、多くて5人。ヨルダンの治安部隊、情報機関が洗練された高い能力をもっているとしても、それだけで「なぜヨルダンがイスラム国のテロを回避できているか」のすべてを説明するのは無理がある。おそらく他の中東諸国とは違って、ヨルダン政府が民意を汲み取る明確な姿勢をみせてきた結果、社会の混乱を抑え、テロのリスクを抑え込めたのかもしれない。「民主体制ではないが、ヨルダンはアラブ諸国のなかでも数少ない、市民が政府への要望や不満を表明できる国だ」。ヨルダンではアブドラ国王とムスリム同胞団はともに相手に対して寛容な立場をとっている。そこに問題への政治的解決策が存在することが、大がかりな社会的混乱も過激派テロもヨルダンで起きていない最大の理由ではないか。
- ヨルダンでテロが少ない理由
- 軍と情報機関
- 不満への対応と政治的寛容
<ヨルダンでテロが少ない理由>
ヨルダンは「イスラム国」(ISIS)の格好のテロターゲットにされてもおかしくない地理環境にある。すでにイスラム国は、ヨルダンの近隣諸国のほぼすべてに攻撃を試みている。2015年5月にはサウジアラビアのモスクをターゲットにした自爆テロが起き、同年11月にはロシアの旅客機がエジプト上空で爆破テロに遭っている。2016年1月にはイスラム国はイラクのショッピングモールを襲撃し、シリアではイスラム国がバッシャール・アサドの軍隊と戦闘を開始してすでに2年になる。
2014年以降、イスラム国はイラクで1万8000人の民間人を殺害し、シリアでは、2015年だけで約2000人のシリア人を殺害している。
しかもヨルダン経済が深刻な状況にあるだけに、(民衆の不満と社会の混乱に乗じて)この国でもテロが起きても不思議はない。・・・
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