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ローマ史はわれわれに何を問いかける
―― 近代政治への教訓

マイケル・フォンテーヌ コーネル大学准教授(古典)

What Rome Can Teach Us Today

Michael Fontaine コーネル大学准教授(古典)。専門はラテン語文学と古代ローマ史。

2016年4月号掲載論文

ローマ人はすでに5世紀末までに、その後、19世紀半ばまで西洋世界が実現できなかった高度な生活レベルを享受していた。そこには水洗トイレ、大理石のキッチンカウンター、屋内暖房、美容歯科まであった。ローマはこのライフスタイルを「元老院とローマの市民」(SPQR)として知られる、市民と選挙で選ばれる指導者との関係を通じて保障していた。そうした古代ローマの歴史には近代政治の教訓とできるエピソードが数多くある。移民問題、予防攻撃、ポリティカル・コレクトネス、宗教集団への対応、マイノリティの扱いなどだ。紀元前146年にローマがカルタゴ相手に最終的に勝利を収めて以降の歴史は、新たな一極世界における覇権が伴う問題が何であるかもわれわれに教えている。その後、ローマでは対外的な敵の消失によって、内的な権力抗争が展開されるようになり、小さな脅威でさえも帝国の存続を脅かす脅威とみなされるようになった。・・・

  • SPQR
  • ローマ人と現代
  • ローマ史の教訓とは

<SPQR>

古代ローマは、小さな都市国家から世界帝国へと台頭した歴史をもっている。領土的拡大のピークにあった117年には、ブリテン諸島からメソポタミア、ライン川からサハラ砂漠までを支配下におく一大帝国を築き上げていた(次ページ地図参照)。その歴史は千年以上に及んだ。ローマ人は、西ローマ帝国が5世紀末に崩壊するまでに、その後、19世紀半ばまで西洋世界が実現できなかった高度な生活レベルを実現していた。

そこには水洗トイレ、大理石のキッチンカウンター、屋内暖房、美容歯科まで存在した。ローマはこのライフスタイルを「元老院とローマの市民=古代ローマの主権者」(SPQR)として知られる、選挙で選ばれた指導者と市民との関係を通じて保障していた。実際、SPQRという略語は(公共の建物や軍旗など)いたるところで利用され、その名残は現在も存在している。・・・

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