生産年齢人口の減少と経済の停滞
―― グローバル経済の低成長化は避けられない
The Demographics of Stagnation
――Why People Matter for Economic Growth
2016年3月号掲載論文
労働人口、特に15―64歳の生産年齢人口の増加ペースが世界的に鈍化していることは否定しようのない事実だ。生産年齢人口の伸びが年2%を下回ると、その国で10年以上にわたって高度成長が起きる可能性は低くなる。生産年齢人口の減少というトレンドで、なぜ金融危機後の景気回復がスムーズに進まないか、そのかなりの部分を説明できる。出生率を上げたり、労働人口に加わる成人を増やしたりするため、各国政府はさまざまな優遇策をとれるし、実際多くの国がそうしている。しかしそれらが中途半端な施策であるために、労働人口の増大を抑え込む大きなトレンドを、ごく部分的にしか相殺できていない。結局世界は、経済成長が鈍化し、高度成長を遂げる国が少ない未来の到来を覚悟する必要がある。
- 低成長の理由
- 人口減少トレンド
- 人口増大と経済成長
- 人口増大奨励策
<低成長の理由>
経済成長がリーマン・ショック前の平均的水準に戻っていない。これは世界のすべての国に共通する現象だ。莫大な対外債務、格差の拡大、債務・金融危機後の消費の冷え込みなど、エコノミストは、なぜ今回の危機後の景気回復のペースが戦後史のなかでもっとも緩慢なのか、その理由を説明するさまざまな理論を示してきた。いずれもそれなりの説得力をもっている。しかし、おそらくはもっとも重要かもしれない要因が見落とされている。それは労働人口の伸びが世界的に鈍化していることだ。
世界経済の潜在成長率を算出する方法として、生産性の伸び率に労働人口増加率を加える方法がある。1960年以降、この二つの要因が潜在成長率の上昇に貢献してきた。ところがこの10年にわたって、生産性と労働人口の伸びは横ばい状態にある。
もっとも、生産性上昇率の鈍化については、それが本当なのかどうかについて議論がある。現在の生産性の測定方法は、超高速インターネットや人工知能など、新しいテクノロジーがもたらすカネと時間の節約を考慮していないからだ。・・・
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