近代化と格差を考える
―― 再び格差問題を政治課題の中枢に据えるには
Inequality and Modernization
2016年3月号掲載論文
19世紀末から20世紀初頭にかけての産業革命期に、左派政党は労働者階級を動員して、累進課税制度、社会保険、福祉国家システムなど、様々な再分配政策を成立させた。しかし脱工業化社会の到来とともに、社会の争点は、経済格差ではなく、環境保護、男女平等、移民などの非経済領域の問題へと変化していった。環境保護主義が富裕層有権者の一部を左派へ、文化(や社会価値)に派生する問題が労働者階級の多くを右派へ向かわせた。そしてグローバル化と脱工業化が労働組合の力を弱め、情報革命が「勝者がすべてをとる経済」の確立を後押しした。こうして再分配政策の政治的支持基盤は形骸化し、経済的格差が再び拡大し始めた。いまや対立の構図は労働者階級と中産階級ではない。「一握りの超エリート層とその他」の対立だ。
- トップ1%対その他
- 狩猟社会から農耕社会、産業革命へ
- 脱工業化時代と情報革命
- 政治構図の逆転
- オートメーションの時代
- トップ集団対その他
<トップ1%対その他>
20世紀を顧みると、当初大きかった先進国における経済格差は縮小したものの、その後、再び拡大し、チャートで表現すれば大きなU字型を描いてきた。1915年当時、米富裕層のトップ1%は国民所得の18%を占有していた。そのシェアは1930年代に急激に低下し、1970年代までは10%を下回るレベルで推移したが、その後、2007年までには再び24%へと上昇した。
家計所得ではなく、資産を基準に考えれば、格差の拡大はさらに歴然としている。30年前に9%だった「富裕層トップ0・1%の国民総資産に占めるシェア」は2007年には22%へ拡大し、2011年にはトップ1%がアメリカの富の40%を占有していた。・・・
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