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拡大する国内格差と縮小するグローバルな格差

フランソワ・ブルギニョン 前世界銀行チーフエコノミスト

Inequality and Globalization

Francois Bourguignon パリ経済学校教授(経済学)。パリ社会科学高等研究院教授、世界銀行のチーフエコノミストなどを経て現職。最近の著書にThe Globalization of Inequalityがある。

2016年2月号掲載論文

世界を一つのコミュニティとして捉えて格差を考えることもできる。フランス国内での生活レベルの違いだけでなく、フランスの富裕層と中国の貧困層(あるいは、フランスの貧困層と中国の富裕層)の違いを考えることもできるだろう。興味深いのは、グローバルな格差が2000年以降、劇的に縮小し始めたことだ。これは途上国、特に中印の経済レベルが、先進国のレベルへと近づいているからだ。今後、新興国経済が停滞していくとしても、その成長率が先進国の成長率を上回る限り、グローバルな格差は縮小していく。一方、各国の国内格差は拡大し続けている。問題は、各国における国内格差の拡大が、国家間の格差の縮小を相殺している部分があることだ。このトレンドを抑え込むには、各国は所得再分配政策を実施し、労働・金融市場の規制を強化し、企業が資産や生産ラインを外国に移転して、課税逃れをするのを阻む国際的アレンジメントを考案すべきだろう。

  • 国の格差とグローバルな格差
  • ジニ係数で世界をみると
  • 地域別にみると
  • グローバル化の影響
  • 流れを維持するには

 

<国の格差とグローバルな格差>

富や所得になると、人は自分のことを、地球の反対側で暮らす人ではなく、周りの誰かと比べるものだ。平均的フランス人は、何人の中国人が自分よりもよい生活をしているかなど気にしないが、自分が他のフランス市民に比べて経済的に後れをとり始めれば、これを大いに気に懸ける。一方、世界を一つのコミュニティとして格差を捉えるのも理に叶っている。フランス国内での生活レベルの違いだけでなく、フランスの富裕層と中国の貧困層(あるいは、フランスの貧困層と中国の富裕層)の違いを考えるのも合理的だろう。

このレンズで世界をみると、興味深いトレンズが浮かび上がってくる。第1はグローバルレベルの格差が、いかなる国内格差よりも大きいことだ。この捉え方が国内格差だけでなく、世界でもっとも豊かな国と世界でもっとも貧しい国の格差を映し出している以上、これ自体は驚くべきことではない。より印象深いのは、20世紀のほとんどの時期を通じて顕著だったトレンドが覆され、グローバルな格差が(1990年代のゆっくりとした縮小を経て)、2000年以降、劇的に小さくなり始めたことだ。これは主に途上世界、特に中国とインドの所得レベルが上昇したことで説明できる。途上国の経済レベルが先進国のそれに近づいてくるにつれて、グローバルな格差は当面縮小し続けるだろう。

しかし、グローバルな格差が縮小しても、各国の国内格差は拡大し続けている。どの程度格差が拡大しているかについては、エコノミストの間にコンセンサスはない。これは、(富裕層が課税回避策をとるために)家計調査において富裕層の所得が実際よりも低く評価されている可能性があるためだ。このために、それがどの程度かはともかく、先進国の国内格差の拡大が過小評価され、その分国家間の格差の縮小が過大評価されている部分がある。このトレンドを抑え込むには、所得再分配政策を実施し、労働・金融市場の規制を強化し、企業が資産や生産ラインを外国に移転して、課税逃れをするのを阻む国際的アレンジメントを考案すべきかもしれない。

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