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ウクライナがドネツクを失うとき
―― アレクサンドル・ザハルチェンコの世界

アレクサンダー・J・モティル ラトガース大学教授(政治学)

When Ukraine Lost Donetsk

Alexander J. Motylアメリカの政治学者、作家。現在は米ラトガース大学教授。専門はウクライナ、ロシアの政治。コロンビア大学、ハーバード大学での教職を経て現職。芸術家(画家、詩人、小説家)としても活動している。

2016年1月号掲載論文

ウクライナ東部の平和は実現するか。これは、ウラジーミル・プーチンとアレクサンドル・ザハルチェンコという、強情で何をするかわからず、軍事志向の強い二人のデマゴークたちの意向に左右される。プーチンはウクライナ紛争について「自分は見守っているだけだ」と主張し、ザハルチェンコは「自分が責任者だ」と語っている。しかし、現実はもっと複雑だ。2015年9月1日の停戦合意が示すように、決定権をもっているのはプーチンだ。戦争を始めたプーチンなら、和平も模索できる。しかし、ザハルチェンコはたんなる傀儡ではない。思想と野心、そして自分の計画をもっている。彼がおとなしくしているかどうかが、いかなる合意の成功も左右することになる。結局、ウクライナ東部は「凍結された紛争」という事態に陥っていく可能性がもっとも高いが、別のシナリオもある。・・・

  • プーチンとザハルチェンコ
  • ザハルチェンコの世界
  • 誰が選挙に参加するのか
  • モスクワとの関係と「凍結された紛争」

<プーチンとザハルチェンコ>

ドネツク人民共和国(DNR)のアレクサンドル・ザハルチェンコに言わせれば、ウクライナ東部の停戦合意が永続的な平和へとつながっていくことなどあり得ず、分離主義者が支配する領土がウクライナに再編されることもあり得ない。(訳注 ウクライナ東部の分離独立派は、2014年にロシア連邦への編入を求めて独立とDNRの建国を宣言した)。

2015年9月の停戦合意によって銃声が止んだ後の発言、あるいはそれ以前の発言からみても、ザハルチェンコはウクライナ(への再編入)を明確に拒絶し、(ドネツク州とルガンスク州で構成されるウクライナ東部)ドンバスの独立に明確にコミットしている。領土拡大志向の強い彼は、友人か敵かで相手を判断している。11月初旬以降、親ロシア派の分離勢力が再び武力攻撃の頻度を増やしていることに不思議はない。・・・

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