国際貿易に関する危険な妄想
―― 貿易と経済と所得格差
The Truth about Trade
2016年3月号掲載論文
世界貿易の停滞は「ピーク・グローバル化」や「ピーク・トレード」の結果ではないし、保護主義が新たに蔓延しているわけでもない。貿易の停滞は、金融危機後の経済のシクリカルなスローダウンから世界経済が立ち直れずにいることを意味するにすぎない。たしかに、中国の需要に依存してきた原材料輸出国の経済も停滞し、貿易の流れをさらに淀ませている。しかし、これでグローバル化の拡大が終わるわけではない。途上国の台頭もグロ―バル化も終わることはなく、それだけにWTOの役目が終わったわけでもない。貿易改革を支える政治的コンセンサスは形骸化しつつあるが、TPPのような自立的で広範囲をカバーする地域貿易協定を通じてであれ、あるいは多国間交渉の新しいアプローチを通じてであれ、世界の貿易制度の改革は依然として必要だ。この試みを怠れば、より危険な時代にわれわれは足を踏み入れることになる。問題を正面から捉えるために、われわれは貿易に関する危険な妄想を取り払う必要がある。
- 貿易に関する危険な誤解
- 途上国台頭の流れは変わらない
- グローバル化は終わりを迎えたのか
- 貿易と所得格差
- ドーハの衰退
- アジェンダを絞り込めば
- WTOを強化するには
<貿易に関する危険な誤解>
貿易交渉で勝利を祝えることなどほとんどない。これまでアメリカは15の二国間自由貿易協定を交渉してきたが、2010年末に米韓自由貿易協定を締結して以来、(TPPを例外とすれば)交渉が終了したケースはない。この意味では、(批准というハードルが控えているとはいえ)アメリカと11カ国の交渉代表の間で続けられてきた環太平洋パートナーシップ(TPP)をめぐる貿易交渉が最近終了したことは画期的な展開とみなせる。しかしTPPは依然として大きなハードルに直面している。米議会での条約批准をめぐる対立ゆえに、この問題はすでに大統領選挙の争点に浮上している。・・・
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