北欧モデルの教訓とは
―― テクノクラシーとポピュリズムの間
Scandinavia's Real Lessons ―― It's Not All Welfare and Social Justice
2015年12月号掲載論文
北欧諸国は民主社会主義を通じて市場経済と普遍的社会保障間の均衡を見いだし、大きな成功を収めてきたと考えられている。男女平等、国民皆保険、持続可能なエネルギーといった北欧発の進歩的社会政策はいまや広く世界に浸透し、これまで北欧(スカンジナビア)モデルは大きな称賛の対象とされてきた。さらに北欧諸国は他に先駆けて効率的で公正なテクノクラシーを確立してきた。だが近年では、移民規制や緊縮財政といった論争の対象とされる政策を実施し、反EU、反移民をスローガンに掲げる急進的なポピュリズム政党も台頭している。いまや北欧モデルも、自由民主主義とポピュリズムの政治運動との均衡を見いだす必要に新たに迫られている。
- 第三の道
- 変化する「中道」
- テクノクラシー批判とポピュリズムの台頭
<第三の道>
2016年の米大統領選挙に向けた民主党候補たちの論点として、北欧型民主社会主義が取り上げられる一幕があった。2015年10月13日の民主党候補者の討論会で北欧型の民主社会主義を称賛したバーニー・サンダース上院議員(バーモント州選出)は、「デンマーク、スウェーデン、ノルウェーなどにもっと注目して、これら(北欧)諸国の社会保障政策から学ぶ必要がある」と発言した。これに対して「アメリカはデンマークではない」と反論したヒラリー・クリントンは「北欧(スカンジナビア)諸国から学ぶところは多いが、それはサンダース氏が指摘した点ではない」とコメントした。
実際、自らを「パイオニア(foregangslande)国家」と呼ぶ北欧諸国は、これまで先進的で革新的な政策を(他に先駆けて)数多く実施してきた。男女平等、国民皆保険、持続可能なエネルギーといった北欧発の進歩的社会政策の多くは、いまや広く世界に浸透し、サンダース同様に、北欧を優れたモデル地域とみなす人は多い。
とはいえ、近年では移民規制や緊縮財政など、論争の対象とされる政策も実施し、急進的なポピュリズムも台頭している。豊かな小国であるがゆえに、北欧諸国は他の欧米諸国よりも早く様々な経済・社会問題にも直面してきた。・・・
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