新米ロ冷戦の現実
―― 冷戦期以上の米ロ関係の緊張
The Peril of a New Cold War
2015年12月号掲載論文
ロシアにペナルティを科すことが経済制裁の目的だとすれば、われわれは一定の成功を収めている。一方、その目的がロシアをもっと穏健かつ協調的にし、好ましい方向へと向かわせることが目的なら、われわれは意図とは逆の現実に直面している。制裁が続くなかで、アメリカがウクライナに武器を供与し、ウクライナ政府がウクライナ東部(ドンバス)の問題を力で解決しようとすれば、ロシアは歴史的な決定、つまり、ウクライナ全域の占領に踏み切らざるを得ないと考える高官もいる。この場合、300―500万の難民がヨーロッパへと向かうことになる。私の知る限り、モスクワが、これを現実の計画としてまとめているわけではない。しかし、そうした議論があるのは事実だし、この議論を魅力的だと考える高官たちもいる。さらに、包囲網を築かれていると危機感を強めるロシア高官の一部は、バルト諸国の1カ国か2カ国に懲罰を与えることでNATOの安全保障システムが空洞化していることを立証したいと考えている。・・・(聞き手はJeanne Park, Deputy Director, www.cfr.org)
- 冷戦期以上に緊張は高まっている
- ロシアはバルト諸国に侵攻する?
- シリア介入
<冷戦期以上に緊張は高まっている>
―― 米ロは冷戦に突入しつつあるとみるべきだろうか。
歴史が同じように繰り返されることはない。現在起きていることと冷戦期の展開の間にはかなりの違いがある。ロシアはもはや超大国ではないし、ワルシャワ条約機構が存在するわけでもない。東ヨーロッパ、中央ヨーロッパを含めて、ロシアと緊密な同盟関係にあるヨーロッパの国は存在しない。(形式的には連合国家のパートナーである)ベラルーシでさえも、ロシアにとって信頼できる同盟国ではない。
もう一つの違いは戦力構造にある。中央ヨーロッパを含めて、冷戦期には東側が通常戦力面で西側に対する優位をもっているとみなされ、核抑止に依存していたのは西側だった。しかし、いまや状況は逆転している。北大西洋条約機構(NATO)は通常戦力面でかなりの優位をもち、ロシアが超大国であると主張するとしても、その多くは核抑止力に依存している。・・・
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