水素エネルギーへの大きな期待
―― 水素型燃料電池とエネルギーの未来
High Hopes for Hydrogen ―― Fuel Cells and the Future of Energy
2015年12月号掲載論文
水素型燃料電池が魅力ある選択肢であることはかねて明らかだった。水素と酸素の化学反応を利用して電気をつくるため、その過程で排出されるのは熱と水だけだ。そしていまや水素を用いた燃料電池技術は競争力のある選択肢となりつつある。世界における燃料電池の売り上げは年々伸びており、容量も2009年からの4年間で2倍以上に増えている。韓国の現代自動車は、多目的スポーツ車(SUV)「ツーソン」の燃料電池モデルを発売し、トヨタ自動車も水素型燃料電池車「ミライ」を5万7500ドルで発売している。燃料電池が進化すれば、貯蔵能力がないという配電網の最大の問題の一つも解決できるし、再生可能エネルギーの利用も促進される。水素型燃料電池の市場化は、もはや未来のものではなくなっている。但し、幅広い応用にはまだ長い道のりが待ち受けている。
- なぜ燃料電池開発に後れをとったか
- 水素と燃料電池自動車
- 市場化へ
- ゼロカーボンの世界へ
<なぜ燃料電池開発に後れをとったか>
水素型燃料電池が魅力ある選択肢であることはかねて明らかだった。水素と酸素の化学反応を利用して電気をつくるため、その過程で排出されるのは熱と水だけだ。水素型燃料電池なら、環境に優しいエネルギーを、交通部門を中心とする産業に提供できる。しかし、これまでは燃料電池を実用化する方法がなかなか見つからなかった。2009年にスティーブン・チュー米エネルギー省長官(当時)は、水素型燃料電池車(FCV)の実用化には「四つの奇跡」が必要だと語っている。
「効率的かつ低コストで水素を生産する方法を特定し、自動車に高密度の水素を安全に貯蔵する仕組みを考案する必要がある。さらに、燃料電池車に水素を装填するための水素ステーション・インフラを整備し、燃料電池をさらに改善していかなければならない」(当時の燃料電池は耐久性・馬力・コスト面で内燃型エンジンにかなわなかった)。チューは、この四つのブレークスルーをすべて実現できる可能性は乏しいと結論づけ、「(カトリック教会が認定する)聖人でさえ必要とされる奇跡は三つだ」と付け加えた。・・・
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