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フランスのユダヤ人
―― シオニズムとフランスへの忠誠

リサ・モーゼス・レフ
アメリカン大学准教授(歴史学)

How to Be a Jew in France
―― Le?on Blum and French Anti- Semitism

Lisa Moses Leff アメリカン大学准教授(歴史学)。専門はヨーロッパ史、フランスのユダヤ人を研究テーマにしている。近著に『The Archive Thief: The Man Who Salvaged French Jewish History in the Wake of the Holocaust』。

2015年12月号掲載論文

現在と過去の反ユダヤ主義には多くの違いがあるが、基本的な構造は似ている。その背景には、政治と経済の危機があるし、世界中の民主主義国がアイデンティティーとその純度を重視する運動の圧力にさらされていることにも関係がある。そして、人種差別によって多くの人の機会が制限され、各国内の経済格差が劇的に拡大している。現代の反ユダヤ主義を突き動かしているのは、こうした社会の現象と風潮であり、イスラム教対ユダヤ・キリスト教の「文明の衝突」ではない。これをユダヤ人だけでなく、社会全体の問題として捉えなければならない。かつて自分がユダヤ人であることを公言して、フランスの首相になったレオン・ブルムも、「ユダヤ人問題と社会全体の問題間の区別はない」と考え、社会問題へ同じアプローチをとった。この思想を現在のフランス政府も引き継いでいる。

  • 経済・社会問題と反ユダヤ主義
  • ユダヤ系のフランス首相
  • ユダヤ人政治家と共和制
  • 新旧の反ユダヤ主義

<経済・社会問題と反ユダヤ主義>

2014年1月、フランスの風刺週刊紙シャルリエブドの編集部が襲撃された2日後、パリ東部のユダヤ食料品店が襲われる事件が起きた。食料品店に立てこもり、ユダヤ人の買い物客4人を射殺したのはアメディ・クリバリ。彼はフランス生まれでイスラム国(ISIS)に忠誠を誓う人物だった。似たような事件は過去にもあった。2014年には、シリアで1年間イスラム国の訓練を受けたフランス人メフディ・ネムーシュが、ベルギーのユダヤ博物館で発砲し、4人が死亡する事件が起き、2012年には、フランス人のアルカイダ支持者モハメド・メラーが、トゥールーズのユダヤ人学校で3人の子供とラビ一人を射殺している。

これらの事件は、フランスにおける反ユダヤ主義の高まりという、過去15年間のより大きなトレンドが極端な形で表面化したものだ。現実には、長引く不況と社会不安によって、1960年代以降、平和的に共存してきたユダヤ人とイスラム教徒のコミュニティー間の緊張が高まっている。フランスの失業率は10%を上回っており、人種間の緊張がみられる貧困地区の若者に限ってみると失業率は40%にも達し、当然、学校も荒れている。クリバリもネムーシュもメラーも、こうしたコミュニティーの出身者で、彼らの親は、かつてフランスの植民地だったアフリカ諸国から移住してきた移民たちだ。・・・

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