エボラ危機対策の教訓(下)
―― なぜWHOは危機対策を間違えたか
Ebola's Lessons
2015年12月号掲載論文
西アフリカで何が起きているかを世界が認識し始めたのは2014年9月半ばになってからだった。国連安保理はエボラ出血熱を「国際的な脅威である」と宣言し、国連総会もこの流れに続いた。米疾病管理センター(CDC)は大規模な国際的介入がなければ、2月までに感染者は100万を超えるだろうという予測を発表した。だがエボラ危機への国際社会の対応は時期を失していた。WHOの指導者たちは、進行する危機を前にしてもひどく緩慢な対応に終始した。すでに2014年5月末までに感染はギニア、リベリア、シエラレオネ全域へと広がっていた。このとき、WHOのアウトブレイクに対する警報は最低レベルへと引き下げられていた。WHOはグローバルヘルス領域の中枢権限を維持していけるのかとその存続を疑問視する声が上がったのも無理はない。この疑問への答えは「依然としてWHOは必要だ」ということになるが、そのためには組織改革が不可欠だ。・・・
- WHOの実態
- 対応の遅れから制御不能な事態へ
- 国際アジェンダとしてのエボラ危機
- 危機に対する国際的認識は高まったが・・・
- WHOは本当に必要か
- WHOの目的は何か
- 克服すべき課題
<WHOの実態>
一方、WHO(世界保健機関)の幹部たちは2014年5月の世界保健総会(WHA)に向けた準備に気を奪われていた。WHAはWHOを統治する一国一票で採決する意思決定機関で、ここで予算や主要な政策イニシアティブが決定される。WHAは、誰もが嫌がる、疲れ果てる会議になることが多い。加盟国の代表たちが、提案された決議の曖昧な部分をめぐって午前3時まで論争を繰り広げることもある。これは、キリバスやパラグアイのような国が、中国やインドのような大国、あるいは、主要なドナー国であるヨーロッパ諸国やアメリカと同じ発言権をもっているためだ。合意をまとめるには、主要国代表との事前協議を含む、数週間にわたる準備が必要になる。それでも、WHOのミッションと役割について何度も論争が蒸し返されることも珍しくない。・・・
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