難民の自立を助けよ
―― 難民危機への経済開発アプローチを
Help Refugees Help Themselve
2015年12月号掲載論文
長期的な難民生活を強いられている人々は、永続性のある解決策、つまり、母国あるいはその他の国が「平和的な社会に自分たちを統合してくれること」を願っている。昨今のシリア難民への対応をめぐるヨーロッパの混乱からみても、難民危機への新しいアプローチが必要なことは明らかだ。難民の生活レベルを改善する一方で、難民受け入れ国の経済、安全保障利益を高める政策が必要とされている。現在の古色蒼然たる政策を、特別経済区を作って、難民に雇用を提供することで自立の道を与え、社会に統合していく政策へと見直していく必要がある。最終的に紛争が終わった時に備えてシリア難民はビジネスの下地を作っておく必要がある。このプロセスを難民受け入れ国経済の発展にも寄与するものにしなければならない。こうしたアプローチなら、難民の必要性と受け入れ国の利益を重ねあわせられるし、他の難民危機への対応にも適用できるだろう。
- なぜ新しいアプローチが必要か
- 難民を雇用する経済特別区を
- 「亡命経済」は和平と再建にどう機能するか
- 難民を経済開発に生かす
- 挑戦と機会
<なぜ新しいアプローチが必要か>
いまや国内避難民と難民の規模は6000万に達しており、これは第二次世界大戦以降、最大規模の人々が故郷を追われて暮らしていることを意味する。現在、最大規模の難民を生み出しているシリア紛争だけをみても、1000万人が国内避難民となり、400万人が国境を越えて難民化している。
欧米の関心はこうした難民のヨーロッパへの大規模な流入、つまり、難民危機に向けられている。だが実際には、シリア難民の多くを受け入れているのはヨーロッパ諸国ではなく、ヨルダン、レバノン、トルコなどのシリアの近隣諸国だ。これらの諸国の対応・受け入れ能力はすでに限界に達している。例えば、人口400万で領土的にもメリーランド州よりも小さいレバノンに100万人ものシリア難民が流れ込んでいる。人口構成でみると、難民に占める子供や若者の割合は高く、これは、レバノンの就学年齢人口の半数以上がシリア人の子供たちであることを意味する。・・・
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