革命国家の歴史とイスラム国
―― さらなる拡大と膨張はあり得ない
ISIS as Revolutionary State
2015年11月号掲載論文
極端な暴力路線をとり、性奴隷を正当化しているとはいえ、革命運動としてみればイスラム国(ISIS)に目新しい要素はほとんどない。宗教的側面をもっているとはいえ、イスラム国は多くの側面においてフランス、ロシア、中国、キューバ、カンボジア、イランで革命期に出現した体制、国家建設を目指した革命運動に驚くほどよく似ている。そして、歴史が示すところによれば、革命国家を外から倒そうとする試みは、逆に強硬派を勢いづけ、さらなる拡大の機会を与え、逆効果となることが多い。よりすぐれた政策は、イスラム国に対する辛抱強い「封じ込め戦略」を地域アクターに委ね、アメリカは遠くから見守ることだ。無謀な行動はコストを伴い、逆効果であることを誰かが教えるまで、革命国家がその行動を穏健化させることはない。その革命的な目的を穏健化させるか、完全に放棄するまで、イスラム国を辛抱強く封じ込める必要がある。
- 歴史的革命とイスラム国 (部分公開中)
- 革命運動の思想的特質
- 革命と戦争
- 革命は拡散しない
- 「封じ込め戦略」を
- 対策は現地政府に委ねよ
<歴史的革命とイスラム国>
その残忍な戦術と宗教過激主義を目の当たりにした多くの人にとって、イスラム国(ISIS)は特異なまでに不可解で、かつてなく危険な存在に思えるかもしれない。その指導者たちの声明から判断すると、この集団は異教徒を葬り去り、世界にイスラム法(シャリア)を強要し、預言者ムハンマドの世界を今に復活させることを望んでいる。そして、イスラム国の戦士たちはこの目的を、想像を絶する残忍な手法で実現しようと試みている。
しかも、領土を管理することにはほとんど関心を示さなかったアルカイダとは違って、イスラム国は自分たちが管理する地域に純然たる国家基盤を構築しようと試みている。明確な権限系統、徴税・教育システムを確立し、洗練されたプロパガンダプログラムをもっている。「カリフ制国家」を自称し、現在の国民国家を基盤とする国際システムを拒絶しつつも、彼らは領域国家を管理・運営している。イスラム国が支配するイラクとシリアを訪問したドイツのジャーナリスト、ユルゲン・トーデンホーファーが言うように、「われわれはイスラム国がいまや国家であることを理解しなければならない」・・・
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