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ロシアはなぜシリアに介入したか
―― プーチンに譲歩を求めよ

ミッチェル・オレンスタイン ペンシルベニア大学教授(政治学)

Russia's Desperate Measure

Mitchell A. Orenstein ペンシルベニア大学教授で、専門は中東欧の政治。

2015年9月号掲載論文

なぜプーチンはシリア紛争に介入したのか。第1の目的は、ウクライナという言葉を新聞のヘッドラインから消すためだ。モスクワの外交担当者たちは、ウクライナ問題が後方に位置づけられるようになれば、欧米の問題意識も薄れ、最終的に制裁も緩和されると期待している。第2の目的は、シリアに関与することで、プーチンは、欧米が取引しなければならない世界の指導者としての地位を確立できると考えたようだ。だが、安易にプーチンの策謀に調子を合わせるのではく、欧米はこの「プーチンのあがき」をうまく利用して、ウクライナ問題をめぐってロシアから譲歩を引き出すべきだ。ウクライナが東部国境を守る権利を認め、ロシアの部隊と兵器を撤収させ、恩赦と権力分有を条件に、ドンバスの指導者たちにキエフへ権限を返還させる必要がある。

  • 追い込まれたプーチン
  • ウクライナをめぐるプーチンの誤算
  • そしてシリアへの介入
  • ワシントンはどう対応すべきか

<追い込まれたプーチン>

最近、モスクワはシリアへの軍事支援を強化し、シリアのラタキア港の空軍基地に500人規模の部隊を派遣しただけでなく、戦闘機、ヘリコプター、大砲、戦車、航空管制施設も投入し、延べ1000人を収容できる組立型住居用の建材も送り込んでいる。シリアのロシア部隊は(アサド軍に)訓練を与えることが目的だとモスクワは主張しているが、すでにロシア軍が戦闘に関与していると伝える報道もある。

介入のタイミングはドラマティックだった。シリア紛争ではすでに22万人が犠牲になり、数百万人が家を追われている。この混乱から逃れようと、数十万のシリア人がヨーロッパの玄関に押し寄せ、難民申請を求めているタイミングで、ロシアはシリア紛争に介入した。・・・

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