解体したヨーロッパ市民社会
―― 多文化主義と同化政策はなぜ
失敗したか
The Failure of Multiculturalism―― Community Versus Society in Europe
2015年4月号掲載論文
多文化主義と同化主義は、社会の分裂に対する二つの異なる政策処方箋だが、結局、どちらもヨーロッパの社会状況を悪化させてきた。英独は多文化主義政策を、フランスは同化政策を導入した、だが、イギリスではコミュニティ同士の衝突がおき、ドイツのトルコ人コミュニティは社会の主流派からさらに切り離され、フランスでは当局と北アフリカ系コミュニティの関係が険悪になった。しかし、社会が分裂し、マイノリティが疎外され、市民の怒りが高まっている点では各国は同じ状況にある。理想的な政策は「多文化主義の多様性を受容する側面と、同化主義の誰でも市民として扱う側面を結合させることだろう」。だが、ヨーロッパ諸国はその正反対のことをやってきた。多文化主義と称してコミュニティをそれぞれの箱に閉じ込めるか、同化主義と称してマイノリティを主流派から疎外してきた。この政策が分断を作り出してしまった。
- 多文化主義の理念と現実
- 多様性という虚構
- イデオロギーの衰退と文化の台頭
- イギリスの過ち
- ドイツの差別的多文化主義
- アイデンティティの模索
- フランスの同化政策
- もう一つの方法
<多文化主義の理念と現実>
30年前、多くの人は寛容で多様な社会、つまり、多文化主義的社会こそがヨーロッパの社会問題を解決してくれると考えていた。しかしいまや、逆に多文化主義こそが社会問題の元凶だと考える人が増えている。
デービッド・キャメロン英首相やアンゲラ・メルケル独首相を含む主流派の政治家までもが多文化主義を批判し、その危険を公言するようになった。(市民社会が混乱に包み込まれるなか)オランダの自由党からフランスの国民戦線まで、ヨーロッパ各地で極右政党とポピュリスト政治家が台頭している。2011年7月にノルウェーのウトヤ島でアンネシュ・ベーリング・ブレイビクが起こした乱射事件など、極端な暴力事件も起きている。・・・
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