緊縮財政が民主主義を脅かす
―― ルビコン川を渡ったヨーロッパ
Austerity vs. Democracy in Greece
2015年3月号掲載論文
単一通貨を共有しつつも、財政政策を共有していなければ、危機に直面した国は緊縮財政を実施せざるを得なくなる。だがその結果、GDP(国内総生産)はさらに大幅に縮小し、それに応じて債務は増えていく。これがまさに、最近のヨーロッパで起きていることだ。問題はドイツが主導するヨーロッパ当局がデフレの政治学を債務国に強要し、債権国の資産価値を守るために、債務国の有権者が貧困の永続化を支持するのを期待していることだ。どう見ても無理がある。このような環境では、本来は安定している国でも急進左派と急進右派が、われわれが考えているよりも早い段階で急速に台頭してくる。ギリシャの「チプラス現象」がヨーロッパの他の国で再現されるのは、おそらく避けられない。ルビコン川を最初に渡ったのはギリシャだったかもしれない。しかしその経済規模ゆえにゲームチェンジャーになるのは、おそらくスペインだろう。・・・
- 緊縮財政の悪夢
- インフレの政治学とデフレの政治学
- 極右と極左勢力の連帯?
<緊縮財政の悪夢>
ギリシャの政治的展開を描写するのに、「ルビコン川を渡る」というローマ帝国時代のメタファーを用いるのは奇妙かもしれないが、このケースについては適切だろう。ローマ元老院の警告にもかかわらず、ジュリアス・シーザーがルビコン川を渡ったように、反緊縮財政の立場をとる急進左派連合のアレクシス・チプラスは、ヨーロッパの指導者の反対にも関わらず、(EUが求める)ギリシャでの緊縮財政を終わらせることを決意した。
チプラスがそれに成功するかどうかは、まだわからない。しかし、何が起きようと、チプラスが選挙で勝利を収めたことで、ヨーロッパは大きな分岐点に立たされたことになる。急進左派連合の勝利は、緊縮財政に残された時間がいまや限られていることを意味する。
「チプラス現象」がヨーロッパの他の国で再現されるのは、おそらく避けられない。緊縮財政の継続を選挙で訴えるのは、「決して果たされることのないより良い未来の実現という約束を前提に、現在の窮状を受け入れるように市民に求めること」に他ならないからだ。・・・
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