キリスト教民主主義の衰退とヨーロッパ統合の未来
The End of Christian Democracy
―― What the Movement's Decline Means for Europe
2014年9月号掲載論文
ヨーロッパのキリスト教民主主義者は、本質的に超国家主義的なカトリック教会同様に、国際主義志向が強く、国民国家を重視しなかった。欧州連合(EU)に象徴される戦後ヨーロッパでの超国家主義構造の形成を主導し、統合を目指すヨーロッパ政治におけるキープレイヤーとして活動したのも、こうした理由からだ。だが、ここにきて、キリスト教民主主義は力を失ってしまったようだ。その理由はヨーロッパ社会の世俗化が進んでいるからだけではない。イデオロギー的にキリスト教民主主義の最大の敵の一つであるナショナリズムが台頭し、その中核的な支持基盤である中間層と農村部の有権者が縮小していることも衰退を説明する要因だろう。欧州統合というヨーロッパの大プロジェクトが新たな危機に直面しているというのに、キリスト教民主主義は、その擁護者としての役目をもう果たせないかもしれない。
- 欧州統合の危機とキリスト教民主主義
- キリスト教民主主義の本質とは
- 衰退の理由
- 欧州人民党の混乱
- EUの命運
<欧州統合の危機とキリスト教民主主義>
今日のヨーロッパはキリスト教民主主義が形作ったと言っても過言ではない。戦後の欧州統合も米欧協調もキリスト教民主主義者たちのアイデアだった。1945年以降の西側諸国、そして1989年のベルリンの壁崩壊以降の東側諸国では立憲民主主義が大きな広がりをみせたが、その仕組みをつくる上でキリスト教民主主義は非常に重要な役割を果たしてきた。
現在のヨーロッパでもっとも大きな影響力をもつアンゲラ・メルケル独首相も欧州委員会のジョゼ・マヌエル・バローゾ委員長も、そして2014年11月からバローゾの後任に就任するジャンクロード・ユンケル元ルクセンブルグ首相も、キリスト教民主主義を掲げる政党の出身だ。2014年5月の欧州議会選挙では、ヨーロッパのキリスト教民主党系政党が結集した欧州人民党(EPP)が最大の議席を獲得している。・・・
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