米金融政策の国際的衝撃
―― 量的緩和縮小と新興国経済
Taper Trouble
―― The International Consequences of Fed Policy
2014年8月号掲載論文
ユーロ圏以外の世界の貿易決済の大部分、そして外貨準備の60%には依然として米ドルが利用されており、当然、FRBの金融政策の変更は、グローバル市場に瞬時に大きな影響を与え、途上国へのキャピタルフローを極端に変化させ、途上国通貨の米ドルに対する価値は激しく変動する。この意味において、途上国の金融政策上の主権は事実上形骸化している。実際、連邦準備制度が資産の買い入れを縮小していくと示唆しただけで、投資家が資金を途上国から引き揚げて米国内の安全な投資先へと移動させたために、途上国の債券・通貨市場は大きな混乱に陥った。問題は、連邦準備制度が政策の判断にその国際的余波を考慮することは法的に想定されていないこと。そして、IMFを別にすれば、その余波を防ぐためのチェンマイ・イニシアティブやBRICS開発銀行構想が依然として実体を伴っていないことだ。・・・
- ウクライナの金融危機とテーパリング
- 米金融政策の変更と新興市場の怒り
- SDRと金本位制システム
- ブレトンウッズ体制の本質
- 金融防衛の政治学
- そして現状は続く
<ウクライナの金融危機とテーパリング>
2013年4月、GDPの8%にも達する膨大な経常赤字を抱えるウクライナは、重要な輸入品を決済するための米ドルを必要としていた。だが4月10日、ヤヌコビッチ政権(当時)は、150億ドルの金融支援パッケージの条件として国際通貨基金(IMF)が課したコンディショナリティの受け入れを拒絶し、国内の経済生産とそれよりもはるかに大きな国内消費とのギャップを、外国市場から借り入れる米ドルによってファイナンスし続けることを選択した。1週間後、キエフは満期10年の12・5億ドル規模のドル建て国債を金利7・5%で発行し、豊富な資金を有する外国投資家の多くがこれを引き受けた。
すべてが順調に進んでいるかにみえたが、米連邦準備制度理事会(FRB)議長がある発言をした5月22日に流れは一変する。ベン・バーナンキ議長(当時)は、米経済がこのまま改善し続ければ、連邦準備制度はまもなく米国債とモーゲージ債の毎月の購入規模を削減(テーパー)していくかもしれないと示唆した。このテーパートークがすべてを変えた。・・・
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