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「変われない日本」の変化を読む
―― ナナロク世代と改革のポテンシャル

デビン・スチュワート カーネギー国際問題倫理評議会 シニアフェロー

Japan's Change Generation―― Letter from Tokyo

Devin Stewart カーネギー国際問題倫理評議会シニアフェロー、同評議会グローバル・ポリシー・イノベーションプログラムのディレクター。

2014年6月号掲載論文

ここにきて、日本人の多くが「停滞し、変われない日本」も、もはや変わるしかないと考えるようになった。こうした変化を象徴するのがナナロク世代だ。親の世代よりずっとグローバルな感覚をもち、リベラルで個人主義的、しかも起業に前向きな、現在30―40歳代の彼らは、いまや社会的な影響力をもつほどに台頭している。これに呼応して、女性の社会進出が進み、教育制度が開放的になり、市民社会も力強さを増している。右派のナショナリストではなく、新しいエリートたちが成功すれば、日本の政治も永久的に変わるかもしれない。既成政党の指導者が年をとり、ナナロク世代がさらに社会的足場を築いていけば、彼らが今後の選挙で当選できる見込みも大きくなる。日本の政治は、新しい人材と思想を必要としており、ナナロク世代は双方において大きな貢献ができる立場にある。

  • 「変われない日本」の変化
  • 変化する日本社会
  • ナナロク世代の台頭
  • 変化の証拠

<「変われない日本」の変化>

駒崎弘樹が日本の保育所不足問題を解決する斬新な方法を思いついたのは4年前。保育所不足はかねて日本の女性が仕事を続ける上で大きな障害だった。彼の新しいアイデアは、東京のアパートの空き部屋を小規模保育所として利用することだった。しかしこの計画も、既存の事業者を新たな競争から守るための規制という、日本ではよく遭遇する壁に遭遇した。しかし彼は計画を諦めるのではなく、日本人としては例外的な行動をとった。とにかく、計画を実行したのだ。

定員20名未満の「おうち保育」を試験的に開設して、このアイデアがうまくいくことを立証し、最終的には、女性としては二人目の厚生事務次官となった村木厚子の支持をとりつけた。村木という支えを得た駒崎は、起業家が定員20人未満の保育所を開設するのを認可するように政府に働きかけた。2015年から子供・子育て支援法が新たに施行される予定だ。

村木は、男女平等と女性の活用を促進することで、日本経済の活性化を試みる安倍政権の「ウィメノミックス」構想の提唱者として広く知られており、実際、日本はこの点での進化を必要としている。

2013年の世界経済フォーラムの男女格差指数ランキングでは、日本は136カ国中105位とされ、男女間格差のさらなる悪化という困惑を禁じ得ない事態に直面している。投資銀行ゴールドマン・サックスの最近のリポートも、日本がこの問題を解決し、もっと多くの女性が労働市場に参入すれば、国内総生産(GDP)は15%増える可能性があると指摘している。

過去20年にわたって、評論家たちはこうした日本の問題を「停滞し、変われない日本」の象徴とみなし、内外の専門家たちは、明治維新や戦後の復興に匹敵する改革の必要性を訴えてきた。だが結局、実を結ばなかった。政治指導者も日本を混迷から救い出せずにおり、安倍首相の経済改革も、これまでのところ十分な経済回復や構造改革を実現できていない。しかし、これらはストーリーの一部でしかない。政府の外で、駒崎のような新世代のリベラルな改革派が真の変化を起こしつつある。

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