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流れは独ロが規定する新ヨーロッパへ
―― ウクライナ危機と独ロの特別な関係

ミッチェル・A・オレンシュタイン
ノースイースタン大学教授(政治学)

Get Ready for Russo-German Europe

Mitchell A. Orenstein ノースイースタン大学教授(政治学)で、政治学部学部長。専門は東・中央ヨーロッパの政治経済。

2014年4月号掲載論文

ヨーロッパでの紛争を回避するために戦後ドイツがフランスとともに西側の枠組みに参加したように、冷戦後のドイツは東ヨーロッパにおける平和的な秩序を支えようと、クレムリンとの強固なパートナーシップの構築を試みた。そしてウクライナ危機が起きた。ヨーロッパとの明確な境界線を引きたいロシアにとっては、クリミアの支配という現状を維持し、ウクライナを不安定化させようと試みるのが合理的なのかもしれない。一方、ドイツは、ロシアとウクライナを直接交渉させる道筋へと向かわせたいと考えている。ロシアに対する制裁には及び腰で、むしろ緊張緩和に努めているとしても、ドイツはウクライナをヨーロッパの経済的軌道に組み込むことを決意しているようだ。クリミアの混迷は膠着状態から抜け出せないかもしれないが、いずれドイツとロシアは協調し、いまはまだ共有していない新しいヨーロッパのビジョンに向けて動き出すかもしれない。

  • 独ロが主導するヨーロッパ
  • ウクライナ危機と独ロ
  • なぜ独ロは協調を求めたか
  • 新しいヨーロッパ

<独ロが主導するヨーロッパ>

ウクライナ問題をめぐる最近の展開は「ヨーロッパ」に関する重要な真実を描き出している。ウクライナ危機が起きるまでは、多くのアメリカ人と西ヨーロッパ人は「独仏が率いるヨーロッパ」という概念を前提として受け入れてきた。第二次世界大戦後に考案されたこのバージョンのヨーロッパは、独仏間の熾烈なライバル関係を抑え込むために両国が大きな決断をし、ヨーロッパの重心は明確に西側に据えられた。だがここにきて、重大な展開が東側で起きている。

ソビエトという過去を克服したいウクライナは、欧州連合(EU)で最大の領土と人口をもつ新メンバーになろうと、最初の大きなステップを踏み出そうとしていた。しかし、ロシアによって行く手を阻まれてしまった。そして、これまでヨーロッパのジュニアメンバーとしかみなされていなかったポーランドが、いまやリーダーとしての役割を担い始めている。ヤヌコビッチ大統領とウクライナ野党勢力の合意に向けてリーダーシップを発揮したのは他ならぬポーランドだ。

この新バージョンのヨーロッパでは、これまでの独仏のリーダーシップが、独ロのそれへと置き換えられつつある。EUが東へと拡大していくにつれて、東と西の境界線や境界地域、つまり、誰がヨーロッパに参加し、誰が参加しないか、そしてどのような条件でそれを判断するかを決めるのは、次第にドイツとロシアの役割になりつつある。・・・

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