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タイの政治的解体
―― 崩壊した密約と終わらない混迷

ダンカン・マッカーゴ
英リード大学政治学教授

Thai Takedown

Duncan Mccargo  英リーズ大学政治学教授、米コロンビア大学ウェザーヘッド東アジア研究所(WEAI)シニアリサーチアフィリエート。神戸学院大学法学部客員教授、クイーンズ大学ベルファスト校客員教授、シンガポール国立大学アジア研究所客員研究員などを経て現職。ロンドン大学卒業後JETプログラムにより愛知県立千種高校で2年間英語を教えていたこともある。著書『Tearing Apart the Land: Islam and Legitimacy in Southern Thailand』はアジアソサエティ・ベルナルド・シュワルツ書籍賞を受賞し、『Contemporary Japan』は日本研究の入門書として広く用いられている。またBBCのラジオやテレビに定期的に出演している。専門はタイと近隣諸国の政治。

2014年3月号掲載論文

2011年7月の総選挙で、タクシン元首相の妹インラック・チナワットが首相に選ばれると、反タクシン派とタクシン派の対立は一時的に後退した。現実的で物腰の柔らかなインラックは、妥協を受け入れる柔軟な路線をとって批判者を当惑させ、旧敵である王室と軍のいずれともうまくやっていけることを立証した。特に軍は国防大臣ポストに人材を提供してインラック政権を支えてきた。インラックの働きかけで、政府と既得権益層は政治取引を交わした。インラックが王室の権威や軍事予算などのデリケートな問題をめぐって強引な行動をとらない限り、既得権益層は、彼女が政権を維持することを認めた。ドバイで逃亡生活を送っているタクシンがタイに帰国するのを認めないことも暗黙の了解とされた。取引が公にされることはなく、野党の民主党、黄シャツ隊・赤シャツ隊の指導者もこの取引の存在は知らなかった。2013年後半までは、すべてがうまくいっているかにみえた。少なくとも表面的にはタイは平常を取り戻していた。だが、それを揺るがす二つの展開があった。・・・

  • タイ社会の変化とタクシンの政治戦術
  • インラック・チナワットと既得権益層の取引 
  • 政治の二極化と軍の役割

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