イランは対話・交渉路線を模索する
―― 最高指導者ハメネイの思想
Who Is Ali Khamenei?―― The Worldview of Iran's Supreme Leader
2013年10月号掲載論文
イランの最高指導者、アヤトラ・ハメネイは聖職者としては、一風変わった過去を持っている。青年期に世俗派の反体制指導者たちと交流し、イスラム革命前に彼らの思想を吸収しているだけでなく、西洋の文学を耽読する文学青年でもあった。レフ・トルストイやミハイル・ショーロホフの作品を絶賛し、バルザックやゼバコの小説を愛読した。なかでもビクトル・ユーゴの『レ・ミゼラブル』が大のお気に入りだった。ムスリム同胞団の思想的指導者サイイド・クトゥブの著作からもっとも大きな影響を受けているとはいえ、ハメネイは、科学と進歩は「西洋文明の真理」であり、イランの民衆にもこの真理を学んで欲しいと考えている。彼はクレージーでも、支離滅裂でも、攻撃のチャンスを模索する狂信者でもない。核兵器の開発も望んでいない。ハメネイは「核兵器は人類に対する罪であり、生産すべきではないし、すでに存在する兵器は解体すべきだ」と考えている。ハメネイは欧米はイランの体制変革を狙っていると確信し、欧米への根深い猜疑心を持っているが、その思想にも変化がみられる。・・・・
- ハメネイの思想的ルーツ
- 文学を愛する思想家としての横顔
- S・クトゥブの影響
- イスラム革命以降
- アメリカの体制変革路線
- 核開発問題とハメネイの立場
- イスラムの聖域とキリスト教への配慮
- 欧米資本主義の衰退
- アメリカとの交渉について
- イランは核兵器を作らない
- 和解への道
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