安倍政権のエネルギーアジェンダ
What's Ahead for Abe's Energy Agenda?
2013年9月号掲載論文
現在の日本の電力市場構造は、第二次世界大戦後の占領期に形作られている。GHQの指令によって電力事業体は地域ごとに独占市場を作り上げ、電力価格は通産省(現経済産業省)によって厳格に規制されてきた。だが安倍内閣の規制改革方針では、半世紀前につくられた古い電力システムを3段階の改革によって変化させていくことが想定されている。まず、独立機関「広域系統運用機関」が新しく創設され、この機関が電力の需給バランスを調整し、地域間の電力供給を担当する。次に、小売市場と卸売市場の両方において、新たな電力供給者の自由参入を認め、電力の取引市場も設けられる。そして、電力の生産、輸送、分配は法的に分離され、小売料金が全面自由化される。・・・だが、今後を大きく左右するのは、原発の再稼働申請が認められるかどうかだ。現状では、停止中の原発48基分のエネルギーを埋め合わせるために(火力発電燃料である)天然ガスの輸入量が急増している。特に、MOX燃料の使用とプルトニウム燃料の再処理プログラムがどう判断されるかが、今後の日本のエネルギー政策を大きく左右する。
- 原発再稼働の行方
- 電力部門規制緩和
- 再生可能エネルギーとMOX燃料
<原発再稼働の行方>
2013年7月21日におこなわれた参議院選挙で圧倒的な勝利をおさめた自由民主党は、連立パートナーである公明党とあわせれば、衆議院だけでなく参議院でも議席の過半数を制し、いわゆる「国会のねじれ」を解消することに成功した。
戦後、原子力を積極的に推進してきた自民党は、(3・11を経た)今後も原子力の促進を模索していくかもしれない。だが、電力部門の改革、再生可能エネルギー開発、原子力産業の先行き、特にMOX燃料を使用するプルサーマル計画の先行きが不透明であるため、自民党の明確な原子力促進策を阻む障害が作り出されることになるかもしれない。
福島第1原発の事故によって、日本の原発のすべてが一時的に稼働停止とされ、日本のエネルギー政策に根本的な問題が作り出されてすでに2年がすぎた現在も、消費者も企業も節電に努め、一方で、停止中の原発48基分のエネルギーを埋め合わせるために(火力発電の燃料である)天然ガスの輸入量が急増している。
7月8日、日本の電力会社4社は新たに設置された原子力規制委員会に対して、5ヵ所の原発施設の原子炉10基の再稼働を申請し、今後、再稼働の追加申請が続くと思われる。
再稼働申請がどのように扱われるかを日本のエネルギー産業は固唾を飲んで見守っている。しかし、エネルギー政策上の重要な別の問題も浮上してきている。日本は、電力産業の構造改革、3・11後の再生可能エネルギー志向の高まり、そして先行き不透明なプルサーマル計画がもたらす衝撃に備える必要がある。
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