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イギリスがEUから脱退すれば
―― ヨーロッパもイギリスも敗者となる

◎スピーカー
チャールズ・クプチャン 米外交問題評議会シニア・フェロー
アダム・ポーゼン ピーターソン国際経済研究所所長
◎プレサイダー
マイケル・モセティッグ PBSニュースアワー

Britain's Place in Europe

Charles A. Kupchan 外交問題評議会シニア・フェロー

Adam Posen ピーターソン国際経済研究所所長

2013年8月号掲載論文

「外交的なメタファーで言えば、現在のイギリスは、米ソが対立していた冷戦期のドイツ、米中対立のなかの日本のような存在だ。ヨーロッパで起きていること(銀行同盟・財政同盟)に引き込まれてもかまわないと思うほどに近い関係にあるわけではないが、流れから取り残されてもかまわないと思えるほどに遠い存在でもない」。(A・ポーゼン)

「現状では、ユーロを導入しているのは17カ国、導入していないEUメンバー国が11カ国だ。ある意味では、一定のバランスがある。だが、ユーロを導入していない第2集団がますます小さくなり、残されるのがイギリスとブルガリアだけになった場合にどうなるか。・・・イギリスは、最終的にEUからの脱退へとつながる道を歩みつつある。・・・イギリスがEUから脱退すれば、政治史における自己孤立のもっとも顕著な事例として記憶されることになるだろう」。(C・クプチャン)

  • EU脱退をめぐる三つのシナリオ
  • EUとの交渉
  • イギリスとヨーロッパの「ルーズルーズ・ゲーム」
  • イギリスがEUから脱退すれば・・・
  • イギリス経済の悪夢

<EU脱退をめぐる三つのシナリオ>

マイケル・モセティッグ 2014年までにスコットランドがイギリスから分離・独立し、2017年までにイギリスが欧州連合(EU)から脱退する可能性があることは、いまや広く認識されている。そして、ヨーロッパでは緊縮財政が実施されてすでに3年以上が経過しようとしている。ヨーロッパ経済は今後3番底を経験することになるのだろうか。先ず、チャールズ・クプチャンから。欧州連合に対するイギリスのアプローチについてはキャメロン政権内でもかなりの混乱があるようだ。あなたは、どうみているだろうか。

チャールズ・クプチャン ヨーロッパ全域でポピュリスト(大衆迎合主義)、ナショナリスト、反EU感情が高まっており、特に、イギリスではこうした政治現象が顕著に認められる。

ヨーロッパ大陸で反EUを掲げる政党が政権を担っている国は一つもないが、そうした勢力が力を伸ばしているのは事実だ。例えば、2012年のフランスの大統領選挙をみると、第1回投票で3位につけたのは反EUの立場をとる(国民戦線の)候補(マリーヌ・ルペン)だった。最近の世論調査によれば、ギリシャで現在もっとも人気がある政党は、EUによる金融支援に反対する急進左派連合だ。だが、フランス、ギリシャ、イタリアその他で依然として政権を担っているのは、中道左派か中道右派の政党だ。非常に厳しい経済状況にあるとはいえ、フランス、ギリシャ、イタリア政府はEU支持の立場を崩していない。

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