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資本主義の危機と社会保障
―― どこに均衡を見いだすか

ジェリー・Z・ミューラー 米カトリック大学歴史学教授

Capitalism and Inequality

Jerry Z. Muller
アメリカの歴史家で、現在は米カトリック大学歴史学教授。専門はヨーロッパ思想史、ドイツ近代史など。

2013年4月号掲載論文

資本主義は人々に恩恵をもたらすだけでなく、不安も生み出すために、これまでも資本主義の進展は常に人々の抵抗を伴ってきた。実際、資本主義社会の政治と制度の歴史は、この不安を和らげるクッションを作り出す歴史だった。資本主義と民主主義が調和して共存できるようになったのは、20世紀半ばに近代的な福祉国家が誕生してからだ。認識すべきは、現状における格差は、機会の不平等よりも、むしろ、機会を生かす能力、人的資本の違いに派生していることだ。この能力の格差は、生まれもつ人的ポテンシャルの違い、そして人的ポテンシャルを育む家族やコミュニティの違いに根ざしている。このために、格差と不安は今後もなくならないだろう。この帰結から市民を守る方法を見出す一方で、これまで大きな経済的、文化的な恩恵をもたらしてきた資本主義のダイナミズムを維持する方法を見つけなければならない。そうしない限り、格差の増大と経済不安が社会秩序を蝕み、資本主義システム全般に対するポピュリストの反動を生み出すことになりかねない。

  • 格差と不安 
  • 市場の誕生と欲望の拡大
  • 家庭と資本主義の相互作用
  • 創造的破壊と福祉国家の誕生
  • 脱工業化社会の衝撃
  • 格差を助長する社会変化
  • 近代金融のインパクト
  • 家庭と人的資本と機会の平等
  • 民族・宗教・人種によるパフォーマンスの違い
  • なぜ教育が万能薬にはなり得ないか
  • 解決策はあるのか

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