金融危機で揺るがされるEUの政治的未来
Fraying European Unity
2012年8月号掲載論文
本来であれば、通貨統合の進展に併せて政治領域での統合も深化させるべきだった。具体的には、財政統合、銀行同盟を制度化するとともに、アメリカの連邦準備制度(FRB)並の大きな能力と権限を持つ欧州中央銀行を作り上げるべきだった。だが、ヨーロッパはこれらの監督機関が必要であることを理解していたにも関わらず、ユーロ導入へと見切り発車をした。適切な監督機関がなく、しかも、北ヨーロッパと南ヨーロッパの経済体質に大きな違いが存在したことが、ユーロの命運を脅かし続け、今日に至っている。そしていまや、危機に対応するためにも、EUの統合をさらに深化させるべきかどうかが問われている。だが、イギリスがEUから脱退する可能性も排除できないし、金融危機が長期化するなか、ヨーロッパ市民の間ではEUに対する反発が高まっている。
- EUの経済と政治
- 政治統合なき通貨統合の帰結
- 欧州サミットの合意で状況は打開されるか
- 統合の行方とアメリカの役割
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