CFR Interview
日本のエネルギージレンマ
―― 再生可能エネルギーへのシフトを阻む文化的要因
Japan's Nuclear Dilemma
2012年3月号掲載論文
日本はこれまで最先端の原子力技術の開発を試み、この領域のリーダーになることを目指してきたが、フクシマを経たいまや、原発施設の再稼働に向けて社会の支持を得られるかどうか、先の見えない状況に追い込まれている。・・・現在日本は、(原発停止による電力生産の低下を火力発電で埋め合わせようと)より多くの液化天然ガス(LNG)を輸入しているが、LNG価格はかつての3倍のレベルへと上昇している。しかも、(日本の現実を考えると)原子力による電力生産の多くを再生可能エネルギーに置き換えていけるとも思えない。原子力による電力生産の多くを再生可能エネルギーに置き換えていこうにも、日本は風力、ソーラー、地熱など再生可能エネルギーの促進を阻む構造的な障害を持っているからだ。電力会社も関係省庁も大規模な電力生産施設を好む文化的体質を持っており、風力やソーラーなどの基本的に「分散型」の技術導入には難色を示す傾向がある。この文化を政治的な意思とリーダーシップで変化させていくには、かなりの時間がかかるかだろう。
- 原子炉稼働停止と電力不足 <一部公開>
- 何が再生可能エネルギーへのシフトを阻んでいるか
- 原子力産業の文化と体質の改善を
<原子炉稼働停止と電力不足>
――フクシマ第1原発はいまどのような状態にあるのか。今後、どのような課題を抱えているのか。
フクシマ第1は世界有数の規模を持つ原発施設の一つだった。2011年3月に巨大地震が起きた時点で3基の原子炉が稼働していた。これら三つの原子炉のすべてで水素爆破が起き、部分的な炉心溶融(メルトダウン)が起きた。2011年3-4月の時点では、原子炉を冷却しようと、ヘリコプター、消防車による水の注入が試みられた。当時は極度の混乱のなかにあった。
事件から2-3週間後には、外部電源との接続が復旧し、冷却ポンプが再び利用できるようになった。数ヶ月後には放射性崩壊熱も低下し、現在は低温冷却の状況にある。
(瓦礫その他を別にしても)現在は施設内をどのようにクリーンアップするかが大きな課題とされている。非常に大量の放射能に汚染された固体、液体が施設内に存在し、これを処分しなければならない。低レベルとはいえ、膨大な規模の汚染物質、数十億ガロンの放射能に汚染された水が存在する。
これをどう処理していくか。アメリカの場合、スリーマイル原発事故から2-3年後に部分的に溶融した核燃料を原子炉から取り出し、それを貯蔵キャスクに入れ、アイダホの国立研究所に送り、現在もキャスクは施設内で保管されている。ここは地上貯蔵サイトで、日本も似たようなことができるかもしれない。原子炉内にある主要な核物質をクリーンアップするには最低でもあと1-2年はかかる。
―― 日本では点検整備のためにほぼすべての原子炉が停止し、その後、再稼働できなくなっている。これだけ多くの原発施設が停止したままで、日本はどのように電力不足を乗り切るつもりなのか。この状況は日本経済にどのような影響を与えるだろうか。
事故の前の段階で、日本では54基の原子炉が稼働していたが、あなたが指摘するとおり、現在はごく一部の原子炉(2基)しか稼働していない。今後数ヶ月で、現在稼働している残された原子炉も稼働停止する。54基の原子炉が、かつては日本の電力生産の30%を担っていた。
2011年6月末、私は日本にいたが、東京の夏はワシントン同様に非常に蒸し暑いが、政府庁舎でも大学のビルでも空調はほとんど入っていなかった。当時は、それでも原発の半分は稼働していた。いまやほとんどの原子炉が稼働停止しているのだから、エネルギーの使用をさらに切り詰めなければならない。もちろん節電措置の効果はある程度期待できるが、電力不足は産業には大きな衝撃を与える。
例えば豊田市の近郊にある浜岡原発は、事故後、政府による稼働停止措置が真っ先に適用された。これがトヨタの操業に影響を与えた。原子炉の停止が、日本の産業にどのような影響を与えるかの具体例だ。
現在、日本はより多くの液化天然ガス(LNG)を輸入している。LNGの利用増大をかねて計画していたことは日本にとって、不幸中の幸いだった。日本は世界におけるLNGターミナルの多くを保有しており、地震と津波によって大きな被害を受けたのはそのうちの一つだけだった。
つまり、LNGの輸入インフラは十分にもっているが、問題はLNG価格が上昇していることだ。原発事故から数ヶ月後には、LNG価格はそれ以前の3倍のレベルに上昇していた。これも日本経済を苦しめている。次に、どうすべきかを現在日本政府は検討している。
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