歴史の未来
―― 中間層を支える思想・イデオロギーの構築を
The Clash of Ideas――The Future of History
2012年2月号掲載論文
社会格差の増大に象徴される現在の厄介な経済、社会トレンズが今後も続くようであれば、現代のリベラルな民主社会の安定も、リベラルな民主主義の優位も損なわれていく。マルキストが共産主義ユートピアを実現できなかったのは、成熟した資本主義社会が、労働者階級ではなく、中産階級を作り出したからだ。しかし、技術的進化とグローバル化が中産階級の基盤をさらに蝕み、先進国社会の中産階級の規模が少数派を下回るレベルへと小さくなっていけば、民主主義の未来はどうなるだろうか。問題は、社会民主主義モデルがすでに破綻しているにも関わらず、左派が新たな思想を打ち出せずにいることだ。先進国社会が高齢化しているために、富を再分配するための福祉国家モデルはもはや財政的に維持できない。古い社会主義がいまも健在であるかのように状況を誤認して、資本主義批判をしても進化は期待できない。問われているのは、資本主義の形態であり、社会が変化に適応していくのを政府がどの程度助けるかという点にある。
- グローバル化と左派思想の衰退
- マルクスの誤算と民主主義の台頭
- 中国モデルの限界
- 格差の増大と民主主義の限界
- 左派思想の衰退
- 歴史の未来と将来のイデオロギー
<グローバル化と左派思想の衰退>
何か奇妙なことが現在の世界で起きている。2008年に始まる金融危機、現在も続くユーロ危機はともに、この30年間で登場した規制の緩い金融資本主義モデルの落とし子だ。しかし、ウォール街に公的救済策がとられたことに人々が大きな憤りを示しているというのに、左派ポピュリズムには勢いがない。
「ウォール街を占拠せよ」運動はさらに大きな流れを作り出していくかもしれない。だが、これまでのところ、もっとも力のあるポピュリスト運動は右派のティーパーティー運動で、そのメンバーたちは、金融投機から一般市民を守るための規制そのものを攻撃対象にしている。同じことはヨーロッパについても言える。左派は精彩を欠き、右派のポピュリスト政党が力を伸ばしている。・・・
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