なぜユーロプロジェクトは失敗したか
―― ギリシャのユーロ離脱は何を引き起こすか
The Failure of the Euro―― The Little Currency That Couldn’t
2012年1月号掲載論文
共通通貨を導入さえしなければ生じたはずのない緊張と対立をユーロはヨーロッパにもたらした。これは、経済的に多様な国家集団に単一通貨を強要したことの必然的な結末だ。調和に満ちたヨーロッパを形作るという政治目標にもユーロは貢献できず、そこには政治的対立と反発が渦巻いている。もはやギリシャにはユーロ離脱という選択しか残されていない。ユーロを離脱し、新ドラクマを導入すれば、通貨の切り下げができるようになるし、ディフォルトに陥っても、ユーロ圏にとどまった場合よりも痛みは軽くて済む。問題は、ギリシャのユーロからの離脱がどのような連鎖を引き起こすかだ。ギリシャが離脱し、通貨の切り下げに踏み切れば、グローバル資本市場は、他のユーロ加盟国はどう反応するだろうか。・・・
- 政治プロジェクトとしてのユーロ
- ユーロが引き起こした必然的危機
- 三つの債務危機対応戦略
- 追い込まれたギリシャ
- ギリシャがユーロを離脱するしかない理由
- ギリシャのユーロ離脱は何を引き起こすか
<政治プロジェクトとしてのユーロ>
ユーロプロジェクトはいまや「失敗した実験」とみなすべきだ。共通通貨が1999年に導入されてわずか12年後に現実となったこの失敗はアクシデントでもなければ、官僚の管理ミスの結果でもない。それは、経済的に多様な国家集団に単一通貨を強要したことの必然的な結末だ。ヨーロッパの数カ国におけるソブリン危機、主要銀行の不安定化、ユーロゾーン全域での高い失業率、そして多くの諸国を苦しめている巨大な貿易赤字。これらはすべて単一通貨ユーロが引き起こした悪影響の一部だ。
調和に満ちたヨーロッパを形作るという政治目標も実現できなかった。フランスとドイツは、救済策をとる条件として、ギリシャとイタリアに痛みを伴う緊縮財政措置を導入するように強制する一方、欧州中央銀行(ECB)の役割、金融支援をめぐる重荷をいかに分担するかをめぐって激しく対立した。・・・
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