ウォール街デモが示す新しい民主主義の可能性
――市民の苦境を無視する政治への反乱
The Fight for Real Democracy at the Heat of Occupy Wall Street
2011年11月号掲載論文
ウォール街デモの政治的側面を理解するには、これを2011年に世界で起きた一連の抗議行動の流れのなかに位置づける必要がある。ウォール街での抗議行動は、5月15日以降、マドリードの中央広場で展開された抗議行動、そして、それに先立つカイロのタハリール広場での民衆デモに触発されている。デモの根底にあるのは、自分たちの民意が配慮されない現実に対する人々の不満と反発だ。問われているのは、代議制民主主義の危機に他ならない。「われわれの目の前にある民主主義が大多数の人々の考えと利益を代弁していく力を失っているのなら、現状の民主主義はもはや時代遅れなのではないか」。デモが問いかけ、求めているのは「真の民主主義」の再確立だ。
- タハリールからウォールストリートへ(部分公開)
- 本当の民主主義を
- 現状に代わる代替システムはあるのか
- ロビイングと組織マネーの台頭
- 裏切られたアメリカの約束
<タハリールからウォールストリートへ>
「ウォール街を占拠せよ」というスローガンを掲げた抗議行動に、なぜ多くの人々が共感を示しているのか。その理由は、運動が「経済的不正義」という人々に広く共有されている問題意識に訴えかけているからだけではなく、政治的不満と政治的希望を明確に表明しているからだ。
抗議行動がローアーマンハッタンのウォール街から全米の都市や町へと広がりをみせていくにつれて、企業の強欲さや所得格差に対する人々の怒りが米社会に充満していることがますます明らかになっている。だが、同様に重要なのは、民意をくみ取る政治的代議制度が欠落していること、あるいはうまく機能していないことへの反発が示されていることだ。
どの政治家や政党が効率に欠けるとか、腐敗しているとかいったことではなく、政治制度における代議機能そのものがうまく働いていないことに対する人々の怒りが表面化しつつある。
ウォール街デモの政治的側面を理解するには、これを2011年に世界で起きた一連の抗議行動の流れのなかに位置づける必要があるだろう。そこには、社会運動の新しい流れが生じている。ウォール街での抗議行動は、5月15日以降、マドリードの中央広場で展開された抗議行動、そして、それに先立つカイロのタハリール広場でのデモに触発されている。こうした一連の抗議行動の流れに、ウィスコンシン州マディソンにある州庁舎での公務員デモ、アテネのシンタグマ広場での反緊縮財政デモ、そしてイスラエルでのテントを設営しての物価高騰に対する抗議行動を加えることもできる。
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