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CFRミーティング
アジアの米軍基地再編と沖縄
―― 普天間移設問題に関する米議会の立場

ジム・ウェッブ 米上院外交委員会東アジア・太平洋小委員会 委員長、元米海軍省長官

A Conversation with Senator Jim Webb

2011年8月号掲載論文

何年もかけてまとめた外交合意を変更するには、具体的な代替策が必要になる。そこで、私とレビン上院議員が(普天間の移設問題に)介入した。われわれはグアム、沖縄、東京で、米軍及び相手国・現地の関係者から意見を聞いた。その後、まとめた提言では、普天間の海兵航空隊機能を嘉手納空軍基地に移して統合すれば、手詰まり状況を打開し、よりタイムリーにコスト面でもより効率的に問題に対応できると指摘した。われわれは嘉手納空軍基地の規模の削減も提言したが、この点は日本のメディアではほとんど報道されなかったようだ。嘉手納基地から削減される戦力を、日本における他の空軍基地、現状では機能の半分も使用されていないグアムのアンダーソン空軍基地に移すこともできる。(ジム・ウェッブ)

  • アジアのバランサーとしてのアメリカ(部分公開)
  • 沖縄の基地、南シナ海、水資源問題
  • 中国は敵かパートナーか
  • 米軍基地の再編
  • 普天間問題への議会の考え
  • 南シナ海をめぐるアメリカの立場

<アジアのバランサーとしてのアメリカ>

 ジム・ウェッブ 東アジア、東南アジアとの私のつきあいは長い。最初にアジアとの関わり合いをもったのは40年前。沖縄に若い海兵隊員として駐留していた私は、ベトナムへと送りこまれた。以来、私はさまざまな役割、あるいは任務を帯びてアジアに関わり、これによって培われた経験が、私のアジア政策のベースにある。

ジャーナリストとして現地に赴任したこともあれば、東南アジアを米企業に紹介したこともある。小説家として、題材を探しにアジアに滞在したことも、映画の制作に関わったこともある。国防総省の首席交渉人を務めたことも、海軍長官としてアメリカの潜水艦に関する東芝機械のココム違反事件を担当したこともある。現在も、上院・東アジア太平洋小委員会の委員長として私はこの地域に関わっている。

私が愛情を感じているアジアはアメリカにとってきわめて重要な地域だし、アジアにとっても、繁栄と戦略バランスを維持していくにはアメリカの存在が不可欠だ。世界の他の地域で厄介な問題を抱えているとはいえ、アジア地域の安定に必要な措置がとられていると人々は当然視しがちだが、必ずしもそうではない。

中国、ロシア、日本の利害が直接的に交錯するのは世界で北東アジア地域においてだけで、その中枢に朝鮮半島が位置している。

第二次世界大戦後にアメリカがこの地域で果たしてきたパワーバランサーの役割は非常に重要だった。第二次世界大戦直後の北東アジアはどのような状態にあっただろうか。

日本が対外軍事キャンペーンを止めて、自国領土へと戻り、ヨーロッパの帝国主義パワーのプレゼンスも低下し、その多くは植民地を手放すことになった。当然、この地域は大きく不安定化するリスクがあった。このリスクが現実と化したために、アメリカはアジアのパワーバランサーとしての役割を担い始めた。

米軍は大きな犠牲を払って、地域的な安定の実現に貢献した。1950年から53年の朝鮮戦争、その後のベトナム戦争で、われわれは10万を超える将兵を失っている。

こうしたアメリカのアジアへのエンゲージメントの詳細をここで述べるつもりはないが、われわれの世代における「知の巨人」の一人であるシンガポールのリー・クアンユーは、ベトナムにおける米軍の活動のおかげで東南アジアは安定し、他の諸国においても政治制度が定着したと語り、ベトナムに米軍が関与していなければ、「その後のアジアの経済的成功はなかったかもしれない」とさえ述べている。

ベトナム戦争以降、ソビエトが東アジアと東南アジアへの影響力を高めるようになるにつれて、われわれは東アジアのパワーバランスを維持することへと路線をシフトさせた。

1980年代半ば、私がペンタゴンで海軍長官を務めていた当時、ソビエトは東アジアに37万の地上戦力を展開していた。85のバックファイアー爆撃機、2400の戦闘機を配備し、ソビエト海軍で最大の艦隊は、600隻を要する太平洋艦隊だった。太平洋艦隊は二隻の空母を短期間で太平洋に派遣できる臨戦態勢をとっていた。実際、1980年代のベトナムのカムラン湾は、25のソビエトの戦艦の母港とされていた。

アメリカは、こうしたソビエトの軍事プレゼンスを地域的安定にとって憂慮すべき脅威とみなしていた。

こうしたソビエトの影響力拡大に対抗するために、アメリカは中国との関係を強化しようと試み、これが多くの意味で中国の経済的台頭に向けた環境を作り出した。

だが、時とともに、われわれがその離陸に手を貸した中国の経済的台頭が他の領域で問題を作り出し、アメリカの脆弱性を作り出している。例えば、最近の南シナ海における中国の行動は、地域的な安定を重視する、アメリカを始めとする数多くの諸国の立場からみて、大いに問題がある。

さまざまな展開があった。ソビエトが崩壊し、中国経済が成長するにつれて、北京は軍事力を近代化して洗練し、こうした背景のもとで、南シナ海での活動を積極化させている。

一方、9・11以降、アメリカはアジアに十分な関心を払わなくなった。「アジアの問題は、イラクやアフガンの問題に比べれば、アメリカにとっての重要度は低い」とみなされるようになったからだ。この構図をいかにして覆すかをこの5年にわたって私は考え続けてきた。アジア諸国のすべては、アメリカの地域関与がいかに重要かを知っている。彼らのためにも、そして、アジア地域の安定にとっても、アメリカのアジアへの関与は重要だ。一方、アメリカにとっても、アジアにおける影響力を維持し、各国との戦略的パートナーシップを経済的、文化的、軍事的に維持していくことはきわめて重要だ。アメリカが焦点を絞り、今後も力を維持していくべき領域は三つあると私は考えている。

 

<沖縄の基地、南シナ海、水資源問題>

第1は、東アジアにおける米軍の基地システム、特に日本における基地システムだ。現在、沖縄の海兵隊基地をグアムに移すことが計画されているが、この問題に私は1973年から関わっている。当時、グアムの戦略プランナーとして、グアム、ティニアン、サイパン、沖縄の基地を調べ、どうすれば、地域的な影響力を損なうことなくアメリカの戦力を再編し、われわれがコミットする諸国とのコミュニケーションを維持していけるかについての分析をまとめた。

この15年にわたって提案され、議論されてきた計画は日本で政治的に難しい問題を作り出し、合意した計画を日米両政府は実施できなくなっている。

私は東京、沖縄、グアム、ティニアン、サイパンを1年半ほど前に訪問し、現地で何が期待されているかを情報収集して提言をまとめた。上院軍事委員会のレビン委員長もこの提言に目を通し、4月には二人で現地を訪問し、議論を重ねた。

その後、われわれは機能的な提言をまとめた。この提言は、短期間でコストを抑えた形で実施可能で、しかもわれわれのアジアにおけるプレゼンスを損なわないものだと自負している。論争のあった問題への解決策を示すために、提言をまとめた。その後、マケイン上院議員がわれわれの提言を支持し、マケイン上院議員、レビン上院議員と私の共同提言とされた。この提言に沿って、タイムリーに基地再編が進めば、アジアでのわれわれの防衛姿勢を強化することになる。

アメリカが影響力を維持していくべきだと考える第2の領域が南シナ海の主権(領有権)問題だ。この問題をうまく描写する言葉はなく、「東南アジアの海洋主権問題」と私は呼んでいる。北京が、中国大陸からは遠く離れたスプラトリー諸島、パラセル諸島を含む非常に広大な海域に対して主権を主張しているために、これまで長年にわたって南シナ海では軍事的小競り合いが絶えなかったが、特に、この1年半にわたっていざこざが目につくようになった。

2010年には、中国の漁船が日本の行政下にある尖閣諸島で事件を起こした。尖閣諸島については中国、台湾、日本が領有権を主張しているが、ここは日本の行政下にある。2010年に尖閣諸島近海で起きた事件は、2―3週間にわたって深刻な日中間の外交的紛糾へとエスカレートしていった。

これらは非常に深刻な、今も続いている問題であり、1年ほど前から深刻な対立へとエスカレートしている。

フィリピン近海でも中国海軍は事件を起こしているし、5月26日から6月9日の間に、ベトナムの領海として国際的に認知されている海域にも中国の漁船と艦船が入り込んで事件を起こした。

私は、米議会に、中国がこの手の軍事行動を止め、多国間交渉のテーブルに着いて領有権問題を解決するように求める決議を提出した。「南シナ海の領有権問題については特定の立場をとらない」というのでは、アメリカの姿勢としてはあまりに消極的だ。われわれは多国間フォーラムでこの問題の解決を目指すべきだ。こうした領有権論争には、各国の安全保障問題だけでなく、経済的未来がかかっている。これらの問題を交渉で解決するために、アメリカは対抗バランスを形成する必要がある。

領土に関わる問題は、海洋だけでなく、東南アジア地域内にも存在する。もっとも有名なのが、メコンデルタ地帯の水資源問題だ。水資源の管理が深刻な対立と化す恐れもある。 クリントン国務長官はメコン川開発構想に熱心に取り組んでいるが、問題の本質は、メコン川上流の中国で複数の水力発電用ダム建設が新たに予定されていることだ。メコン川の下流にあたるベトナム南部のデルタ地域には700万の人々が暮らしており、この地域の生態系も非常に重要だ。だが、上流でダムが完成すれば、メコンデルタでの人々の生活と環境がともに脅かされる。

二つの事実が問題をさらに複雑にしている。先ず、中国が国際河川の上流地域で何をしても下流地域で何が起きるかを気に懸けない世界でも数少ない国の一つであることだ。つまり、この問題には議論や交渉のための共通認識、糸口が存在しない。次に、中国はこの手の問題を、多国間でなく、二国間で交渉しようとする傾向がある。だが、東南アジア諸国のなかで、中国と一対一で水資源問題を話し合うだけのパワーをもつ国はない。

したがって、この問題をめぐっても、アメリカがリーダーシップを発揮して、多国間協調で問題解決を主導することが重要だ。この地域の将来の鍵をにぎるのは、多国間の交渉枠組みをうまく構築できるかどうかだ。

たしかに、この10年間におけるASEAN(東南アジア諸国連合)の成長は大きな期待のもてる地域的展開だ。異なる外交、経済路線をめぐる意見調整の場として、そしてアメリカの意思を伝える場としても、ASEANは非常に重要なフォーラムに成長した。だが、それだけでは十分ではない。2010年にクリントン国務長官とゲーツ国防長官が述べたように、アメリカはこの地域に今後も関わり続けるだけでなく、関与を強化していくべきだし、その枠組みが必要だ。

 

<中国は敵かパートナーか>

ジム・スシュート アメリカは中国を敵として扱うべきなのか、それとも地域的パートナーとして接すべきなのか。

 

ウェッブ 中国にどのような路線をとるべきか、明確な答えはない。実務的で前向きな対中路線をとるべきだと思うが、中国政府がわれわれとは全く異なるシステムで動いていることを認識すべきだ。

経済交流が進んでいるためか、中国政府のことを、まるでアメリカと同じタイプの政府であるかのように考える人もいるが、現実には、そうではない。

中国政府が、われわれとは異なるシステムで機能していることを明確に認識すれば、中国との間で実務的な関係を形作れるかもしれない。実際、「報道の自由」に関するアジア諸国のランキングをみると、中国の下に位置しているのはミャンマーと北朝鮮だけだ。現実的に相手に対処して、地域的な安定を維持するための打開策を見いだす必要がある。

 

スシュート 現実的な路線とはより強硬な対中路線という意味だろうか。あなたは、尖閣、そして南シナ海でのベトナムやフィリピンに対する中国の行動を深く憂慮している。

 

ウェッブ そうした行動に対しては中国に対して明確なメッセージをおくるべきだ。だが、アメリカ側にはためらいがある。経済に悪影響が出るかもしれないし、すでに米政府が中国政府高官と個人的な関係を構築している。他の何かをめぐって協力している相手を不快にさせるのは外交的ではないと考えられている。だが、アメリカがわれわれの外交原則を明確に意識しない限り、アジアの利益もアメリカの利益も損なわれる。

 

スシュート われわれの東南アジアにおける同盟国は、アメリカが原則を明確にすることを望んでいるかもしれないが、アメリカが地域的なパワーを拡大させることをどうみているだろうか、地域諸国は、そうした強いリーダーシップを望んでいるだろうか。

 

ウェッブ 4―5年前まで、東南アジア諸国は「アメリカは地域的なプレゼンスを維持するのを断念しつつあるのではないか」と懸念していた。われわれの地域的な軍事姿勢が後退していたからだ。東南アジアに展開する米海軍の規模も、この地域にアメリカが有する国益についての情報伝達もおろそかになっていた。私が最初の調査をした(1970年代初頭)当時は、太平洋地域にはアメリカの軍艦が930隻配備されていたが、(私がレーガン政権の)海軍省長官だった時代に568隻に減り、今では282隻に減少している。

(9・11以降は)アジア諸国は「アメリカはイラクとアフガニスタンにかかり切りで、自分たちとは意思の疎通を適切にはかろうとしない」と考えるようになった。つまり、東南アジア諸国は「アメリカがディスエンゲージしていくのなら、台頭する中国といかに折り合いをつけるべきか」と考えるようになった。少なくとも、4―5年前までこのように問題が設定されていた。

だがすでに、そうしたネガティブなシグナルを覆すことにわれわれは成功している。クリントン国務長官とゲーツ国防長官は2010年の演説で、ともに、「アメリカは東南アジア地域に国益を有しており、東南アジア諸国にとってもアメリカのプレゼンスが維持されることは、その利益になる」と明言している。

当時は、こうした発言だけでは中国の影響力の拡大を覆すことはできなかったが、中国の行動、特に、ベトナムの探索船が海洋油田の基礎調査をしているときに中国の艦船がそのケーブルを二度にわたって切断した事件をきっかけに、アメリカの立場を強化できる環境が生まれている。

ベトナムその他の東南アジア諸国は、アメリカが言葉を行動で支えるかどうかを見守っている。だからといって、軍事的対決路線をとるべきだとは言わないが、少なくとも相手に明確なシグナルを出す必要がある。

 

<米軍基地の再編>

スシュート あなたはこれまで東アジアの基地再編問題、米戦力をどのように前方展開するかという問題を長く手がけてきた。少ない戦力をよりスマートに配備するというのがあなたの基本姿勢だろうか。より少ない部隊、艦船、基地でよりスマートに影響力を維持するのが狙いなのか。

 

ウェッブ たしかに、効率的に戦力を配備する必要がある。だが、誤解があってはならない。沖縄、グアム、朝鮮半島に「アメリカは北東アジアから撤退しようとしている」という間違ったシグナルを与えないようにしなければならない。

歴史的にみても、北東アジアの安全保障が安定しないことには、東南アジアの安全保障も安定しない。これが現実だ。この意味でも、アメリカが北東アジアから撤退しつつあるといったイメージを与えてはならない。沖縄の人々がわれわれを受け入れ、現地での緊張を緩和させるようなスマートな方法を考えなければならない。

 

スシュート 地域的、あるいは地域を越えた安全保障目的を達成するために、中国の協力が必要なケースもあるとあなたは考えている。アフガンの安定化、そして、イランの核開発プログラム、北朝鮮の活動などを牽制するには中国の協力が必要だ、と。だが、これらの問題の解決に向けた役割を、中国が今後積極的に果たすようになる可能性はあるのか。

 

ウェッブ 私はこの数年にわたって、経済成長を遂げた中国は、いまや洗練されつつある軍事力のレベルに応じて、世界や地域問題の解決に向けた役割を担うべきだと主張してきた。だが、中国はそうした責任ある行動をとっていない。イランであれ、ビルマであれ、中国は国際社会の路線から一歩後退したところに立ち位置を定めている。その結果、中国は、例えば、ビルマに対して大きな影響力と手立てを持つようになり、われわれと比べて戦略的な優位を確立している。北朝鮮によるチョンアン号事件、パキスタン情勢についても同様で、こうした問題の解決に向けて中国が協力すれば、われわれの負担を軽くできる。中国も地域的な安定から恩恵を手にできるわけで、問題解決に協力すれば、複雑な問題をめぐってわれわれを助ける力をもっていることを示すことができる。実際に、中国がそのような前向きの動きをみせてくれることも期待しているが、これまでのところ、そのような気配はみられない。

 

スシュート では、質疑応答へ。

 

<普天間問題への議会の考え>

質問者 日本の基地再編をめぐる米政府とあなたの立場には違いがある。あなたの提言と政府の立場の違いを説明して欲しい。

 

ウェッブ 問題の所在を簡単に振り返ってみよう。沖縄の米軍基地は、日米防衛関係の政治的弱点であり、われわれがこの問題に取り組み始めてすでに15年が経過している。私が沖縄基地の再編について、最初にブリーフィングを受けたのは1997年のことだ。沖縄問題には三つの異なる要因がある。

第1は、米軍部隊、特に海兵隊を、人口密度の高い南部から、人口密度の低い北部へと移動させれば、政治圧力を弱めることができるかどうかだ。

第2は、現地の米軍戦力を一定規模削減して、沖縄の海兵隊8000人をグアムに移動させることが提案されてきた。(現在、グアム移転のコストは議会によって予算案から削除されている)。

第3は海兵隊の空軍基地である普天間問題を解決することだ。この基地は主に、ヘリコプターの離発着が中心になるが、基地の周りは人口密集地帯だ。このために普天間は非常に感情的な問題になっている。

日米両国政府の2006年の合意では、基地再編の一環として、沖縄北部のキャンプシュワブに隣接する沿岸地域に普天間の代替滑走路を建設すると計画されていた。だが、これは奇妙でいびつな基地になる。コストの問題もあるし、辺野古への移設は現地の海の環境保護の観点からも大きな反発がある。沿岸部はダイビングスポーツを初め、レジャーが盛んな場所だ。こうして、普天間基地の移設問題は行き詰まった。移転先の反対は強く、身動きがとれなくなっている。

何年もかけてまとめた外交合意を変更するのは、具体的な代替策がない限り難しい。そこで、私とレビン上院議員が介入した。われわれはグアム、沖縄、東京で、米軍及び日本政府、現地の関係者から意見を聞いた。その後、まとめた提言で、普天間の海兵航空隊機能を嘉手納空軍基地に統合すれば、よりタイムリーにコスト面でもより効率的に対応できるとわれわれは指摘した。

(統合後の)嘉手納空軍基地の空軍規模の削減もわれわれは提言したが、この点が日本のメディアではほとんど報道されていないようだ。削減される戦力を、日本における他の空軍基地や、現状では機能の半分も使用されていないグアムのアンダーソン空軍基地に移すことができる。海兵隊の活動という観点からみれば、地上施設の隣にヘリコプター施設があることが不可欠だ。

外交的立場が依然として変化していない経緯は理解できるが、われわれの提言に即して立場を見直すように両国の政治指導者と話をしている(注 日米両政府は6月の日米安全保障協議委員会(2プラス2)で、普天間基地のキャンプシュワブへの移設を想定する現行の計画を進める方針を確認した。一方、上院軍事委員会のレビン委員長とウェッブ議員は、米軍普天間基地の移設問題について、キャンプシュワブ沿岸部に移設するとした日米合意を「非現実的」とし、嘉手納基地への統合を改めて要求している)。

 

<南シナ海をめぐるアメリカの立場>

質問者 中国とベトナム間の緊張は間違いなく高まっている。アメリカとベトナムの関係にこれがどのような影響を与えると考えているか。

 

ウェッブ 現在、アメリカとベトナムの関係はかつてなく良い状態にある。ベトナム戦争に4年間従軍した後も、1991年以降、私はベトナムを継続的に訪問している。アメリカとの関係が改善するにつれてベトナムの風景そのものが変化し、特に、この4―5年で状況は大きく変化した。

南シナ海の領有権問題に派生する緊張は、アメリカとベトナムの関係改善という面ではプラスに作用している。両国が利害を共有していることをベトナム側が理解したからだ。(南シナ海での航海の自由、国際法が順守されることはアメリカの利益であると表明した)2010年のクリントン国務長官によるハノイ演説は、現地で非常に高く評価されている。

今後も良好な関係を保てるかは、われわれの言葉を行動で支えることができるかどうかで左右される。もちろん、中国はこれをアメリカによる干渉とみなすだろう。ベトナムはこれまでに自分たちが信じる領土の境界については、厳格な態度をとってきたし、今回も、同じ行動をみせている。

 

質問者 中国との領有権論争を抱えるフィリピン、ベトナム、マレーシアその他の諸国は、アメリカが、地域的な平和と安定のために、もっと積極的な役割を果たすことを望んでいる。だが、最近、駐フィリピン米大使は「中国とフィリピン、中国とベトナムの領有権論争にアメリカが介入することはない」と明言している。これが、アメリカ政府の公式の立場だと思う。だが、あなたの立場は米政府とは違うようだ。

 

ウェッブ 二つの異なる問題が絡んでいる。一つは、アメリカが領有権問題に外交的な立場をとるべきかどうかだ。どちらが正しいか、間違っているかの判断に介入すべきではないが、問題を解決するための適切なフォーラムを組織する必要がある。当事国が中国と二国間で問題を解決できると考えているのなら、そうしたフォーラムは必要ない。だが現実には、問題を抱え込んでいる国のなかで、多国間交渉の環境を形づくるアメリカの関与なしで、中国と一対一で問題を解決できると考えている国は一つもない。

状況を放置すれば、問題はますます深刻になる。経済、主権、安全保障上の思惑が交錯しているからだ。しかも、領有権論争を抱え込んでいる国が不適切に軍事力を行使した場合、アメリカは何かを言わなければならないが、交渉の環境を作ることにコミットしていなければ、何の口出しもできなくなる。●

(C) Copyright 2011 by the Council on Foreign Relations, Inc., and Foreign Affairs, Japan ※論文は、雑誌同様にコピーライトで保護されています。 ↑ページの先頭に戻る

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