中国の台頭と米中衝突のリスク
―― バランスを維持するには日韓との同盟関係を維持し、台湾は手放すべきだ
Will China's Rise Lead to War? ―― Why Realism Does Not Mean Pessimism
2011年5月号掲載論文
中国の台頭はたしかに危険をはらんでいるが、それが伴うパワーバランスの変化によって覇権競争が起きて米中の重要な国益が衝突することはおそらくない。核兵器、太平洋による隔絶、そして現在比較的良好な政治関係という三つの要因のおかげで、現在のアメリカと中国はともに高度な安全保障を手にしており、あえて関係を緊張させるような路線をとることはないだろう。米中間の緊張の高まりを抑えつつ、地域バランスを維持するには、事態をやや複雑にするとはいえ、ワシントンはアジアでもっとも重要なパートナーである日本と韓国に信頼できる拡大抑止を提供し、一方で、台湾防衛のような最重要とは言えないコミットメントについては従来の政策を見直し、アメリカは台湾から手を引くことも考えるべきだろう。何よりも、アメリカは中国の影響力と軍備増強によって生じるリスクを過大視し、過剰反応しないようにする必要がある。
- 米中衝突の理論と現実
- 安全保障のジレンマ
- 同盟関係をめぐる論争
- 台湾を手放して米中和解を
- 過剰反応を避けよ
<米中衝突の理論と現実>
中国の台頭は21世紀の国際関係を規定するもっとも重要な出来事になるかもしない。問題は、それがハッピーエンドになるかどうかだ。そうならない場合、どうなるのか。大国間戦争のリスクを高めてしまうのか。米中関係の緊張は冷戦同様に危険なものになるのか。それとも、ソビエトとは違って地政学的ライバルとなるだけでなく、経済的にもライバルとなる中国との関係に規定される時代は、さらに深刻で危険に満ちたものになるのか。
これまで、地域研究、歴史、経済などさまざまな分野の専門家が、こうした疑問の一面については優れた洞察を示してきた。だが、中国の特異性、過去の行動、そして経済的軌道からみると、中国は、多くの専門家が想定するほど、時代を規定するような重要な役割を果たすことはないかもしれない。というのも、中国が超大国としてどのように振舞うか、その行動と他国の行動が最終的に衝突するかどうかは、国際政治のパターンだけでなく、その国の特有の要因にも左右されるからだ。・・・
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