CFRインタビュー
中東の構造的変化に目を向けよ
――自由と権利を求め始めた民衆
Handling the Middle East's Tectonic Shifts
2011年5月号掲載論文
チュニジアやエジプトの民衆が「もうたくさんだ」というスローガンを掲げたことが中東の現状をうまく現している。政治的権利、社会経済的権利を奪われ、雇用も創出されない状況に人々は「もうたくさんだ」と変化を求めた。さらに、政府の腐敗、富裕層と貧困層の間の巨大な富の格差にも人々は激しい憤りを感じていた。民主主義の価値からみても、われわれは民衆が作り出している歴史的潮流の側につく必要がある。だが、中東は多様であり、相手国の特性を考えた上でアプローチを区別する必要もある。チュニジアとエジプトはバーレーンとは違うし、バーレーンはシリアとも違っている。そして、これらの諸国とリビアに共通点はない。中東へのアプローチを一つの枠組みでとらえることはできない。例えば、ホルムズ海峡に近いバーレーンに対しては経済安全保障の視点も必要になるし、リビアについても、われわれはまず反体制派の実体を見極める必要がある。
- 中東は歴史的転換点にある
- リビアへの介入の限界はどこにあるか
- シリアとイエメン
<中東は歴史的転換点にある>
―― 中東の現状をどうみているか。変化する中東に政策的にどう対応すべきか。
中東は歴史的な分岐点にさしかかっている。中東政治は構造的な変革のさなかにあり、当然、中東政策を見直す必要がある。現状を前に、ワシントンが配慮すべき基本原則は二つある。一つは、われわれが歴史の流れの側に就く必要があるということだ。ここで言う歴史の流れとは自由を求める人々の運動だ。チュニジアとエジプト以降の中東での抗議行動は自由が与えられること、つまり、政治、経済、人権領域での基本権が保障されることを求めている。
これが民衆によるグラスルーツ運動であることにも目を向けるべきだ。イスラム過激派や特定の政党や派閥が裏で運動を画策しているわけではない。現在の運動が「中東のポスト植民地時代の終わり」を象徴していることも認識しなければならない。・・・
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