民族と腐敗で引き裂かれた国家
―― ケニアの国家統合への長い道のり
Fear and Loathing in Nairobi
2010年9月号掲載論文
2003年に発足したケニアのキバキ政権は、学校、道路など経済開発のハードウエアを提供することに成功したが、利権を独占し、国としての一体感や連帯というソフトウェアを育めなかった。指導者が政治腐敗にまみれているケニアは、世界的にみても、もっとも大きな経済格差に苦しみ、民族ラインで社会が分裂し、人口構成がいびつなまでに若年層に偏っている。こうした不幸な現実に対する怒りで煮えたぎっていた大釜が、2007年の大統領選挙の混迷に刺激されて、吹きこぼれ、大規模な社会暴力に国が覆われてしまった。その結果、ケニアはかつて経験したことのない国家的な危機に直面した。この事態を前に国連が介入し、いまは連立政権が曲がりなりにも存在する。だが、この連立政権は、民主主義が機能した結果ではなく、それが失敗した結果を象徴している。必要なのは、人々に国家の構成員としての一体感を植え付けることだ。「犯罪がまん延し、日常化しても、国が現在の問題に飲み込まれて内側から崩壊するようなことはない」と人々が確信できるような力強いビジョンをケニアは必要としている。
- 暴動の果ての連立政権
- 幸福感から無秩序へ
- キクユ族の権力と部族対立
- 2007年、何がケニアの若者を暴力に駆り立てたか
- 麻痺した政治
- 民族和解と和平、国家統合への道
- バラク・オバマとケニア
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