食糧・穀物供給危機の再来か
― 異常気象と穀物市場の行方

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会シニア・フェロー

Wheat Supplies and Food Fears

Laurie A. Garrett CFRグローバル・ヘルス担当シニア・フェロー。世界の公衆衛生、医療問題、パンデミックなどの研究を専門とする。最近は、健康問題に関わる援助問題、途上国の政治問題にも研究領域を広げている。

2010年9月号掲載論文

記録破りの猛暑の日差しが、世界の穀倉地帯を焦がしている。異常気象による収穫減を前に、ウクライナやウズベキスタンがロシアと同様に穀物の輸出禁止措置に踏み切れば、すでに先細り気味の世界の穀物収穫量はさらに下方修正を余儀なくされる。インド、スイス、フランスその他のヨーロッパ諸国が大量の穀物備蓄を開始しているという噂もある。サウジアラビアや中国などの諸国は、すでに今後の食糧危機に備えて、アフリカやアジアの貧困諸国で耕作可能な土地を確保しつつあるようだ。現在の穀物市場をめぐる世界の不安を抑えようと賢明に試みている世界農業・食糧機関も、最近の価格高騰が始まる前の2010年6月に憂鬱な予測を示している。それによれば、農産品の供給が十分ではなく、エネルギーコストが増大し、拡大する世界の中産階級層の食の多様化が重なり合うことで、今後10年の穀類、穀物、石油、乳製品価格は、2007年の水準と比べて40%上昇する可能性がある。厄介なことに、小麦その他の穀物の取引トレンドは、食糧危機が起きた2007~2008年のそれに似てきている。穀物の先物取引が急増し、いまや価格は2008年以降、最高水準に達している。

  • 食糧危機の再来は避けられない?
  • ロシアの穀物輸出禁止措置の余波
  • 貧困国の苦悩
  • 危機を回避できるのか

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