医療ツーリズム、途上国の貧困、 先進国の医師不足の負の連鎖
―― 危機にさらされる医療大国キューバ

ローリー・ギャレット 米外交問題評議会グローバルヘルス担当 シニア・フェロー

Castrocare in Crisis ― Will Lifting the Embargo Make Things Worse?

Laurie A. Garrett 米外交問題評議会シニア・フェロー(グローバルヘルス担当)。感染症、HIV・AIDS、新型インフルエンザなど、パンデミックが国際関係に与える影響を専門とする。フォーリン・アフェアーズ誌で「感染症という名の新たな脅威」、新型インフルエンザをテーマとする論文など、世界的話題となった論文を数多く発表している。

2010年8月号掲載論文

現在のキューバの医師と患者の比率は、1万人当たり59人と、世界的にみても非常に高いレベルにある。キューバは、基礎的な疾患が人々の生命を脅かすことのなくなった世界唯一の貧困国で、この領域でのキューバのパフォーマンスは他の追随を許さない。キューバは他の途上国へと医師を派遣し、いまや、医療関係者がキューバにとって最大かつ最善の「輸出品」だ。先進国からの医療ツーリズムの著名な目的地の一つでもある。チェ・ゲバラやフィデル・カストロの肖像画さえなければ、キューバの外国人用病院はヨーロッパや北米の一流クリニックとなんら変わらない。だが、問題もある。先進国との経済格差ゆえに、ひとたび対キューバ制裁や旅行規制が解除されれば、十分な手当を与えられていない有能な医師や看護婦が医師不足に悩む先進国へと一気に流出し、キューバの医療体制は崩壊の危機に直面する恐れがある。

  • 危機にさらされるキューバの医療革命
  • 医療ツーリズム
  • 医療ツーリズムのもう一つの側面
  • 医療先進国キューバ
  • 人口の高齢化と経済的困窮
  • ほころびだした制度
  • 大規模な頭脳流出の恐怖

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