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アジアの大学は世界のトップを目指す
―― 問題解決能力と技術革新で経済と社会を支えるには

リチャード・C・レビン イエール大学学長

The Rise of Asia's Universities

Richard C. Levin イエール大学の経済学教授、経済学部学部長を経て、1993年からイエール大学学長。

2010年5月号掲載論文

アジア諸国の指導者たちは、科学、産業、政府、市民社会へと送り込む優れた人材を育成する場として、世界でトップクラスの大学がもっとも適切な訓練機関であることをすでに理解している。そうした教育機関は、問題を解決し、技術革新を促し、社会をリードしていくのに必要な、思想的な奥行きと建設的・客観的な批判的思考(クリティカル・シンキング)を持つ人材を生み出すことができるからだ。これまでのように、専門知識を与えることばかりを重視し続ければ、広い視野を身につけさせぬまま学校から社会へと学生を送り出してしまう。伝統的な暗記中心の教育法では、社会的創造力を生徒たちに与えられないことをアジア諸国は明確に認識しだした。自分のために考え、議論を体系的に行い、新しい情報や正当な批判に直面した場合には、自分の立場を擁護するか、見直すことを学んでいかせなければならない。これが、21世紀の社会で成功していくための大学教育の基本であることをアジア諸国は強く認識し始めている。

  • 経済成長と教育
  • アジアにおける経済と教育の成長
  • 世界トップクラスの大学を目指す
  • 研究の優先課題
  • なぜ暗記型教育からの離脱が必要か
  • 世界のトップ校を作るには何が必要か
  • アジアの試みは何を意味するか

<経済成長と教育>

第二次世界大戦以降のアジア経済の急速な成長は、世界のパワーバランスを大きく変化させた。先ず日本がめざましい経済成長を遂げ、韓国と台湾がこれに続いた。その後、香港とシンガポールが、そして、ついにインドと中国が力強い成長を遂げるようになった。アジア諸国は、教育を受けた労働力が経済成長にとって重要であること、そして、研究への投資が経済の革新性と競争力を高めることも理解している。

1960年代以降、日本、韓国、台湾の政府は若者の高等教育へのアクセスを高めようと試み、見事な成果を上げた。現在の中国とインドは、さらに野心的なアジェンダを掲げている。両国は高等教育システムの拡大を模索し、特に中国は1990年代末以降、その努力を大いに強化してきた。両国は、少数ながらも、世界でトップクラスの大学を国内に誕生させたいと考えている。現在、中国は九つの大学にほとんどの教育関連予算を集中的に注ぎ込んでいる。これらはC9と呼ばれ、「中国のアイビーリーグ」として認識されつつある。インドも負けてはいない。人材開発省は、世界クラスの14の総合大学を新たに設立すると最近発表した。他のアジア諸国も後れをとるまいと努力している。シンガポールは、シンガポール国立大学と連携したアメリカ流のリベラルアーツ・カレッジの設立に加えて、技術・デザイン系の公立大学の新設も計画している。・・・

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